新井祥子元議員とともに告訴されたライター飯塚玲児氏 名誉毀損罪成立濃厚か

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松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

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青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。

 群馬県草津町の新井祥子元議員が同町の黒岩信忠町長から「強要され肉体関係を持った」と告発した件で、同議員と電子書籍の著者である飯塚玲児氏(53)が名誉毀損で告訴された。告発した元議員だけでなく、その告発をベースに書籍に掲載した書き手に対しても刑事責任を問うというものである。伝えられる限りの情報で言えば、一方の取材しかしていないことを公言している飯塚氏はかなり厳しい状況に追い込まれているように思う。

■信じ難い発言「片取材であることは否めない」

問題の電車書籍「草津温泉 漆黒の闇 5」

 問題の書籍「草津温泉 漆黒の闇 5」は、2019年11月に発売された。既に「茶番劇? 新井祥子元議員『町長室で気持ちが通じた時には本当に嬉しかった』」で紹介したように、元議員の告発をベースに書かれており、肉体関係を強要したとする町長側の取材はない。

 この点、飯塚玲児氏はブログ「飯塚玲児のNew Lazy Days」の「『草津温泉 漆黒の闇 5』発売されました!」(11月12日付け)の回で、「証拠となるものはある程度揃えたつもりだけれど、片取材であることは否めない。」と書いている。本人も(一方だけの言い分だけで書きました)と認めているに等しい。

 準強制性交と思われる事案を扱っているのに、加害者とされた人物の話を聞かずに一方的に決めつける内容の記事を書くこと自体、客観性が求められるライターとしては疑問。それだけでなく他者の名誉、基本的人権について何の想像力も働かないことを示していると言って差し支えなく、書き手以前に社会人としてどうなのか問われる。

 飯塚氏が書いた内容には、以下のようなものがある。

今回は、性器を用いた挿入による性行為を行なっている。つまり、強制わいせつ罪ではなく、刑法177条の強制性交等罪として裁かれる可能性があるのだ。

要求を断ることで様々な協力が得られなくなると誤信させ、事もあろうに、職場である町長室内で現職女性議員と肉体関係に及ぶような人物が、草津町長にふさわしいのだろうか?

 ここで、参考のために名誉毀損罪の条文を示しておこう。

【刑法230条】

1 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。

■公共の利害に関する場合の特例で無罪主張か

 この先の展開を見通すのは難しいが、最終的には司法の場で決着ということになろう。町長室内での出来事が新井祥子元議員の証言と異なることが明らかになった場合などは、飯塚氏の弁護側は、公共の利害に関する場合の特例(刑法230条の2)を持ち出して無罪を主張するはず。

 これは、電子書籍に書かれたような内容はなかったということになった場合でも「事実を真実であると誤信し、その誤信したことについて確実な資料・根拠に照らし相当な理由があるときは、犯罪の故意がなく、名誉毀損の罪は成立しない」(最高裁大法廷判決昭和44年6月25日)という主張である。

 しかし、これは厳しいと思う。「茶番劇? 新井祥子元議員『町長室で気持ちが通じた時には本当に嬉しかった』」でも書いたが、新井議員は黒岩町長に好意を寄せ、町長室で気持ちが通じたときは本当に嬉しかったという趣旨の告白をしているのであるから、それを強制性交と誤信したと主張するのは無理がある。何より、飯塚氏自身が「片取材であることは否めない」と断言しているのだから、書いた時点で新井議員の告白の真実性について一定の疑いを持っていたのは明らかである。

■お灸を据えられれば、社会にとって有益では?

 飯塚氏がなぜ、名誉毀損の疑いが濃厚な記事を書いたのかは分からない。しかし、ライティングの世界には、その程度の認識で仕事をしている者が存在しているのは確かである。

 今回の件で飯塚氏が裁判所からお灸を据えられるようなことがあれば、それはそれで社会的には有益なことであるのかもしれない。

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