中国「豊川市にマスク返します」に台湾人の冷めた反応「中国製かw」「宣伝かい」

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葛西 健二🇯🇵 @台北 Taipei🇹🇼

葛西 健二🇯🇵 @台北 Taipei🇹🇼

京都産業大学外国語学部中国語学科、淡江大学(中華民国=台湾)日本語文学学科大学院修士課程卒業。1998年11月に台湾に渡り、様々な角度から台湾をウオッチしている。

 愛知県豊川市の竹本幸夫市長が3月24日に中国の江蘇省に提供したマスクを自国が足りなくなったために返してほしいという趣旨の発言をしたことは、台湾でも大きく報じられました。日本同様に「みっともない」という声が強かったのですが、中国へのネガティブ発言も多数見受けられました。そこに中国への警戒心が強い台湾ならではの特徴が見えてきます。

■「返して」の豊川市長に「恥さらし」の声も

台湾でマスク返してを検索すると、このとおり…(葛西健二氏提供)

 豊川市の市長が善意で「あげた」ものを「貸した」のでもないのに「返して」と要求、正確にはマスクを「ください」なのでしょうが、斜め上を行く発言に「みっともない」と感じるのは私だけではないでしょう。同時に、台湾に「封鎖」中の私としては日本のマスク不足はそこまで深刻なのか、という思いです。

 台湾のネットの反応も、まずは「みっともない」というのが目につきました。

他是認真的嗎 (彼は本気で言っているのか)

丟臉 (恥さらし)

想不到日本人會犯這種蠢 (まさか日本人がこんな愚行を犯すとは)

好傻好天真 身為領導者 這個能力不行 (本当に抜けていて天然だな。上に立つ人がこんな能力じゃだめだ)

 台湾人に限らず、これが普通の感覚でしょう。「返してほしい」と言うぐらいなら、返してもらわなくてもいいように最初から提供する数を適正なものにするのが普通の人の感覚です。

■中国が返却したら「奇跡だ」の声も

 台湾らしいのが「返してほしい」と言われた中国側について言及するコメントが多かったことです。

日本你們太天真了你覺得中共是好人嗎 (日本人は天然すぎる 中共がいいやつだと思うか)

日本人太不了解中共了 (日本人は中共のことを理解しなさすぎ)

還是不可能還的,中國人大概是會高價倒賣回去 (返さないよ 中国人なら高値で売りつけるだろう)

中國會歸還就是「奇蹟」了 (中国が返却したらまさに「奇跡」だ)

日本人沒有「肉包子打狗」這句俗話吧 (日本には「肉包子打狗」という諺がないのだろう)

 最後の「肉包子打狗」は「肉饅頭で犬を叩いても、犬はそれをたべてしまう。行ったきり帰ってこない。出て行くだけで戻ってくるものがない」という意味です。

「中共」は中華人民共和国のことです。一時期日本でも台湾の国民党政府との区別のため、中華人民共和国を「中共」と呼んでいましたが、今ではほとんど使われなくなりました。

■中国製への警戒心「届くまで安心するな」

台湾・桃園市の市街地(撮影・葛西健二)

 ところが、このマスク騒動は台湾人の予想を超えた展開になりました。同市の友好都市提携を結ぶ江蘇省無錫市からマスク5万枚が発送されたと伝えられたのです(友好都市は同市新呉区)。日本のマスコミは「10倍の恩返し」と伝え、台湾メディアもこれを「10倍奉還 (10倍返し)」との見出しで報じました。

 日本のポータルサイトでは引き続き市長への批判や反省を促すコメントと中国への感謝のコメントが大半を占めていますが、台湾の人々の受け止め方は若干異なります。肯定的に捉えるコメントもありますが、懐疑的な見方の意見が多く見られたのです。

中國製 哈哈 保重 (中国製 ハハ お大事に)

希望不是10倍劣質品的奉還 (レベル劣化10倍返しにならないことを願う)

先檢品質 (まずは品質検査からだ)

 このように、中国製品の品質を疑う意見が見受けられます。マスクは肌に直接触れるものですから、衛生状態を問題にする声が出るのも当然かもしれません。日本でも報じられましたが、日本の紙製オムツが中国で大変な人気になったことがありました。中国の人は自国製品の衛生面について信用していません。中国人が信用していない衛生関連用品を、無償で提供されることのリスクを日本人は分かっているのか、ということなのでしょう。

 拿到再說 (まずは届いてからだ)というコメントも似たようなものと言えます。

■ネットの反応からみる台湾人の現実的な視線

 さらに注目したいのは、以下のコメントです。

對於這篇新聞是否真實 智商正常人士持懷疑態度 (知的で正常な人はこの種のニュースには懐疑的だ)

又在做大外宣 (また外に向けて宣伝しているのか)

 中国が返却の要請に応じるどころか10倍にして返すということは、政治的思惑があるに違いないと感じていると思われます。

 新型コロナウイルスが世界に拡散した後、中国外務省の報道官が「この感染症は、アメリカ軍が武漢に持ち込んだものかもしれない」とツイッターに投稿しました。また、米国が中国の対応が遅れたことで世界的な災厄になったとの批判に対し、同省は「中国に責任をなすりつけるべきではない」と反論しています。「武漢ウイルスと呼ぶな」という主張もその一環なのでしょう。

 感染が拡大しているイタリアを積極的に支援し、ウイルスと戦って勝った国をアピールしていることはご存知の通りです。そのような中国の大きな世界戦略の中に、豊川市の件も含まれていると感じているのだと思います。

 台湾の人は日本よりも中国を熟知しているという背景から、中国を「信用できない」とするコメントが多くなったものと思われます。中国が絡んでいるニュースであるが故に、豊川市長の発言に対する批評や日本への意見よりも、まずは負のバイアスがかかった見方(中国や中国共産党への不信感・敵対心・嫌悪感等)や、それに基づく反応を起こしてしまう台湾の人々の現実的な視線・思考法を感じました。

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