北朝鮮が迎撃困難な弾道ミサイル発射 敵基地攻撃のハードル下げ抑止力に

The following two tabs change content below.
松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。

 北朝鮮が3月21日、日本海に向けて飛翔体2発を発射し、日韓の防衛当局は短距離弾道ミサイルと分析したと報じられた。報道では迎撃を避ける動きをするものだという。北朝鮮の脅威が高まっているが、一方でそのことにより敵基地攻撃のハードルは低くなる。日本はそうした点をもっと積極的に発信し、抑止力を高めるべきである。

■低空飛行から再び急上昇する”プルアップ”軌道

北朝鮮のミサイル発射を伝える3月22日付け産経新聞

 北朝鮮が発射したミサイルは「韓国軍の分析によると、落下後に低空飛行し、再び急上昇するプルアップと呼ばれる特異な軌道を描いた。迎撃を避ける動きだ」(産経新聞3月22日付け)とされている。

 我が国のミサイル防衛体制の中で迎撃システムが重要な部分を占めているのは、素人である僕でも分かる。しかし、その迎撃システムを機能しにくくする、あるいは機能させないためのミサイル実験を北朝鮮が行なっているということである。

 そうなった場合、国民の生命や身体、財産を守るために国がなすべきことは何か。より精度の高い迎撃システム、プルアップ軌道で巡航するミサイルをも迎撃するシステムを構築することは考えられるであろう。

 しかし、相手はそれを上回るトリッキーな軌道のミサイルを開発するかもしれない。もはや迎撃不能と言えるミサイルを開発したら、パワーバランスが崩れ極めて危険な状況に陥る。

■1956年鳩山一郎内閣での敵基地攻撃の政府見解

船田中防衛庁長官が答弁した際の衆議院内閣委員会の議事録(国会会議録検索システムから)

 それを防ぐため、相手が発射できないように敵基地を攻撃するのは当然の防衛手段である。専守防衛の我が国でも敵基地攻撃は現行憲法下でも可能である。敵基地攻撃に関する政府見解は1956年2月29日、鳩山一郎内閣での国会答弁で明らかにされた。

 「侵害の手段としてわが国土に対し、誘導弾等による攻撃が行われた場合…(中略)…そのような攻撃を防ぐのに万やむを得ない必要最小限度の措置をとること、たとえば誘導弾等による攻撃を防御するのに、他に手段がないと認められる限り、誘導弾等の基地をたたくことは、法理的には自衛の範囲に含まれ、可能であるというべきものと思います。」(船田中防衛庁長官が首相答弁の要旨を答弁、第24回国会衆議院内閣委員会会議録第15号241頁)

 ここで注目していただきたいのは赤の太字の「他に手段がないと認められる限り」という部分。政府見解としては敵基地攻撃は「他に代替え手段がない場合に限る」としているのである。

■一気に下がる敵基地攻撃のハードル

 要するに迎撃ミサイルで対処が可能であれば敵基地攻撃はしない、できないというのが政府見解。もちろんこの先、政府見解を変更する可能性はあるが、現行憲法下で政府見解を維持するとして、迎撃が極めて困難なミサイルを北朝鮮が発射しようとしている、あるいは発射すると恫喝してきた場合には敵基地攻撃をするハードルは一気に下がる。

 北朝鮮のミサイル発射後に行われた自民党本部での緊急役員会で稲田朋美幹事長代行は「排他的経済水域に着弾し、国民の生命身体が危険にさらされる場合うち落とす、さらには敵基地反撃能力を持つと発信すべし」と発言したことをツイートしている。弁護士でもある稲田幹事長代行、そのあたりの政府見解を踏まえた上での発言であるのは間違いない。

 北朝鮮がこうしたミサイル(やそれに類する飛翔体)を発射すればするほど、自らの首を絞めることになることは自覚すべきであるし、我が国も稲田幹事長代行のようなメッセージを明確に発するべきだと思う。そうすることが抑止力に繋がり、結果として平和が維持できるのである。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です