2020年3月20日、台湾の男性に衝撃的なニュースが飛び込んできました。今年で4回目となる「TRE」(台北国際成人展)の中止が主催者側から発表されたのです。日本の肉体派の女優は台湾ではアイドル的存在。年に1度の直接会う機会を失った台湾男性は「宅男哭哭」状態です。(台北・葛西健二)

■高橋しょう子の為なら死んでも悔いはない

女優・上原亜衣さんの台湾でのイベント(葛西健二氏提供)

 TRE(Taipei Red Expo)は2017年から7、8月に3日間の会期で開催され、関連するグッズの販売やプロモーションが行われます。「トップクラスの女優に近づける」をキャッチフレーズに、「摸 (触れる)」ことのできる距離間での交流(握手会やプレゼント手渡しイベントなど)を重視し、多くのファンを惹きつけました。

 2019年は15社のスポンサーが参加。三上悠亜さんや高橋しょう子さんなどトップクラスを含む総勢20名がファンと交流し、来訪者は12万人を超えました。

 この人気イベントが新型コロナウイルスの影響で3月の時点で中止が決定したのです。メディアも大きく報じました。

TRE台北國際成人展取消 紳士哀號:為了高橋死又何憾 (エキスポ中止 紳士達の号泣:高橋しょう子の為なら死んでも悔いはない)」(ETtoday)

宅男哭哭 疫情影響成人展喊停:今年摸不到女優了  (オタクは泣く ウイルス禍でエキスポ中止:今年は女優に触れられない)」

 「女優」は本来、中国語にはありません。日本語の「女優」は中国語では「女 演員」です。中国語で「女優」が使われる場合は”そっち系”の女優を指します。今では一般的に定着した比較的新しい語彙です。もっとも台湾には”そっち系”の女優は存在しません。

■台湾では偶像、服を着たままで仕事になる


 台湾の男性は日本のその類のビデオが大好きです。今は影を潜めましたが、10年前ぐらいまでは違法なコピー商品が電気街で堂々と売られていました。正規ルートではケーブルテレビでライセンスを得た作品を放送する専門有線放送チャンネルが複数あり、スマホ専用サイトでも視聴が可能です。

 日本では彼女たちは基本的に性的好奇心の対象でしかありませんが、台湾では「偶像 (アイドル)」です。俗な言い方をすれば、日本では服を脱がなければ仕事になりませんが台湾では服を着たままで仕事になります。

台湾のファンは日本の女優の来訪を待ち望んでいる(撮影・葛西健二)

 私自身、通訳等で彼女たちと仕事をしたことがあるので、その人気ぶりを肌で感じていました。波多野結衣さんはかつて自身のSNSで、台湾でのアイドルのような扱いに感激している旨の発言をされたということです。

 彼女は台湾の「国民的姉さん」である女優の林志玲さん(EXILEのAKIRAさんの夫人)にも似ていることから、「小・林志玲」と呼ばれることもありました。2015年には台湾映画「沙西米」に主演。私はそこでも一緒に仕事をしましたが、真面目で仕事にストイックなプロの女優であり、人間的にも素晴らしい方でした。


 同年、台湾北部を中心とする各種公共機関や全国のコンビニで使用できるICカード「悠遊カード」のモデルに採用され、限定3万枚が数時間で完売となりました。「悠遊カード」は台北市との半官半民の悠遊卡公司から発行されており、日本なら都営地下鉄のカードのようなものでしょうか。台湾では女性団体やPTAから反対の声が上がり、その一方で「批判自体が差別である」との反論が政治家から起きるなどちょっとした騒ぎとなりましたが、台北市は予定通り販売しました。

■美しく魅力的な女性であることに変わりなく

 このように日本以上に偶像としての人気がある理由は、一つには彼女たちがルックスで普通の女優と比べて見劣りしないということがあるでしょう。スタイルなどでは普通の女優より魅力的と言えると思います。

 また、日本では芸ではなく性的な部分を見せるということで女優とは異質、はっきり言えばかなり格下に見ますが、台湾では「芸を見せるか美しいボディーを見せるかの違いで、美しく魅力的な女性であることに変わりはない」とフラットな視線で見ていると思います。

 さらに、台湾にはそうしたことを専門にする女優はいませんから、惜しげもなく見せる彼女たちにストレートに魅力を感じているのではないでしょうか。そのため、日台での扱いの違いが出ているのではないかと思います。

■新型コロナウイルスが台湾男性の夢も奪う

 新型コロナウイルスの影響で日本人が台湾に入国するのは極めて厳しくなっています。3月19日以後はほぼ全面的に入国禁止状態ですが、そうなる直前の3月13日、TREに3年連続で招待されている明里つむぎさんの撮影会が行われました。

 日本人の台湾入国禁止措置決定直前のタイミングで敢行されたこの催しは、感染クラスタになるリスクを承知で開催するところにファンの熱意と情熱を感じると共に、この大変な時期に訪台した明里つむぎさんのプロ根性を示したとも言えます。

 もちろん、訪台自体がニュースになりましたし、同時に新型コロナウイルス対策として撮影会に際し様々な規則が設けられたということでも話題になりました。

 日本では”日陰の存在”と言うと失礼かもしれませんが、台湾では彼女たちは太陽のような存在です。そして日台友好に大きな役割を果たしています。台湾の男性の多くは様々な意味で、早く新型コロナウイルス禍に去ってほしいと願っていることでしょう。

葛西健二(かさい・けんじ)>

 1976年、京都市出身。京都産業大学外国語学部中国語学科、淡江大学(中華民国=台湾)日本語文学学科大学院修士課程卒業。修士論文は「台湾日本統治期初・中期における『理蕃』政策の変遷と『蕃通』警察官ーその役割変化及び言語学習環境ー」。中華民国教育部中国語能力検定試験一級(Master)。1998年11月に台湾に渡り、様々な角度から台湾をウオッチしている。