日刊スポーツが休校要請を「丸投げ」と批判 中学生も失笑するような非論理性

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松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。

 日刊スポーツ2月29日付けは1面で「安倍政権ふざけるな!!」という大見出しを掲げた。2月27日に安倍晋三首相が新型コロナウイルス感染拡大阻止に向けて、全国の小中高などに休校要請をしたことを中心とした対策に対する批判を展開している。しかし、書いている記者が法律や行政を全く理解できていないせいか、素人が読んでも論理的におかしいと感じるであろう内容となっている。

■休校要請の法的な仕組み…最初から「丸投げ」

日刊スポーツ2月29日付け1面

 安倍首相は28日の衆院財務金融委員会で前日の休校要請について、各学校、地域で柔軟に判断してほしいことを答弁した。

 これに対して日刊スポーツは前文で「一斉休校は自らの政治決断としながら、実際は『丸投げ』」とし、本文では「最終的な判断は各自治体に『丸投げ』する構えを示した」とした。その上で、こう続けている。

 学校保健安全法は、感染症予防を目的とした休校の権限があるのは学校の設置者と規定するが、子どもを持つ多くの保護者や教育現場、企業側に大きな決断を強いながら、無責任な呼びかけだった。唐突な休校要請は、3月2日から春休みに入るまでとされる以外、具体的対応は示されていない。事実上の「見切り発車」だ。

 そもそも休校要請は、首相に学校の休校を強いる権限がないため、要請という形で出された。学校保健安全法は感染症予防で休業とする権限は学校の設置者と定めている(同法20条)。学校の設置者とは国(国立大学法人等を含む)、地方公共団体(公立大学法人を含む)、学校法人である。

 学校の設置者も強制力のない要請であるから、各設置者が状況に応じた対応をすることは事前に十分に予想されることではあった。特に野党系の首長がいる自治体は簡単に応じるとは思えない。

 要請を出すことは安倍首相の政治決断であるが、それはあくまでも学校の設置者へのお願いに過ぎないのであるから、最終的な実施やその方法は設置者に対して、日刊スポーツの言う「丸投げ」をせざるを得ない。具体的対応は各設置者が状況に応じて決すべき性質のもので、政府が一律に示せるものではないし、また、強制力がない以上、具体的対応を示す意味もない。

 日刊スポーツがそうした法制度に基づく政策を批判するなら、憲法の第8章(地方自治92条ー95条)を見直すことから始める必要があるだろう。

■安倍首相が保護者に決断を迫った?

 さらに「子どもを持つ多くの保護者や教育現場、企業側に大きな決断を強いながら、無責任な呼びかけだった。」とするのは、全く論理性に欠ける。

 既述したように、安倍首相から決断を迫られたのは学校の設置者、即ち地方公共団体等であり、保護者や企業は何の決断も強いられていない。

 極めて抽象化して書けば、「法制度上、最初から丸投げするしかない政治決断をした上で、自治体等に決断を迫った」のが今回の休校の要請である。それを日刊スポーツは、最初は丸投げしていなかったのに翌日に丸投げして、決断を強いていない相手に対して丸投げは無責任だと批判しているのである。

 前提事実を誤認した上でする評論に読む価値などない。中学生レベルでも読んで失笑してしまうような非論理的な記事を1面掲載とは、日刊スポーツ出身者として恥ずかしいなどというレベルではない心境であることを分かっていただきたいものである。

 このレベルの記事を掲載なら、大谷が投げた、筒香が打った程度の記事を掲載している方がまだマシであるし、また、そうすべきだと思う。

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