富士フイルム株式会社(本社:東京都港区)が2月5日に公開したコンパクトデジタルカメラ『FUJIFILM X100V』の公式プロモーション動画の一部が、わずか数時間で削除された。カメラマンの鈴木達朗氏が、街中で手当たり次第に無許可で人を撮影する様子を映したもので、被写体にされた人が困惑する様子が明らかになっている。このような非常識な行為に対し何らかの責任を負わせたいが現実的には難しく、鈴木氏のやり得という状況となっている。公開した富士フイルムさん、どうなってるの?

■すれ違う瞬間にカメラで撮影 立ち塞がる例も

鈴木達朗氏の撮影方法(『FUJIFILM X100V』プロモーション動画から)

 問題の動画の中で鈴木氏は繁華街を歩き、すれ違う瞬間にいきなりポケットからカメラを取り出し、撮影したり、時には前に立ち塞がる方法でレンズを向けてシャッターを切っている。街を歩いていていきなり撮影対象とされてしまった人たちは、瞬間的にレンズから逃れようとしたり、小走りに逃げたり、振り返って睨みつけたり、反応は様々であるがどれも不快感、恐怖心が表に出ている。

 これに対して鈴木氏は動画の中で「渋谷の雑多加減って異常だなと思って、これはやっぱり、東京のネイティブの人間として、内側から撮っていった方がいいんじゃないかなという思いもあって、ひたすら撮ってるような感じですね」「生身の人間を撮りたいっていうのがあって、すると脚色がないものって、ストリート写真かな…素(す)の状態で…」と撮影している理由を語っている。

 さらに「自分でも分からないですよ。相手のプライバシーゾーンにこんな近い所で、撮らなきゃいけないのか分かんないですけど、何か、テンションっていうか、瞬間的に刹那的に撮って、いわゆるダイナミックな感じで、写真を残したいとなるとどうしても、そうするとああいう撮り方に自然となっていった。緩い写真じゃなくて、こう、ピンと張ったものを残していきたい」と何とも身勝手な理屈を並べている。

■東京都迷惑防止条例に問えないのか

カメラマンの鈴木達朗氏(『FUJIFILM X100V』プロモーション動画から)

 ネットではこうした行為は「盗撮」等の東京都迷惑防止条例が禁止する行為に当たるのではないかという声が出ている。しかし、結論から言えば難しい。考えられる犯罪としては以下がある。

・盗撮(5条1項2号)

・つきまとい行為(5条の2第1号)

 本線の盗撮は条例では「次のいずれかに掲げる場所又は乗物における人の通常衣服で隠されている下着又は身体を、写真機その他の機器を用いて撮影し、又は撮影する目的で写真機その他の機器を差し向け、若しくは設置すること。」と規定されている。鈴木氏は通常衣服で隠されている部分を撮影しているのではなく、顔を含む全身を撮影しており、条例に抵触するとは言い難い。

 つきまとい行為は「つきまとい、待ち伏せし、進路に立ちふさがり、住居等の付近において見張りをし、住居等に押し掛け、又は住居等の付近をみだりにうろつくこと」とされており、鈴木氏は撮影した後、足早にその場を立ち去っており、つきまといとも言えない。

 念の為、警視庁に電話をし、生活安全特別捜査隊の方に話をうかがった。担当の方は「ああ、富士フイルムの件ね」と、既に内容は把握済みであった。その上で「私も動画を見ましたが、ただ単に通行人の顔を撮ってというものですから、直ちに(迷惑防止条例の盗撮が成立する)とは言えないと思います」とのことであった。さらに「街中を歩きながらパッパと撮ってる状況が映ってますから、つきまといの方でも厳しいでしょう」とのことであった。

■鈴木氏のやり得を許さない

 現行の迷惑防止条例では鈴木氏に刑事責任を問うのは難しい状況なのは確かであろう。それならば撮影された人が不法行為(民法709条)で損害賠償請求をしたり、画像データの消去を求めることで対応するしかないであろう。鈴木氏のやり得を許さないためにも、撮影された人たちに法的措置を取ることを求めたい。

 鈴木氏が社会通念から外れた行為をするカメラマンであることは今回の件から明らかだが、残念なのは富士フイルムという日本を代表する企業が、新商品のPRとしてこの非常識な動画を公開したことである。

 この点は、現在、富士フイルムに質問を出している。後日、同社の言い分を紹介できれば、ここで紹介する予定である。