としまえん閉園 かける言葉は「幼い頃の夢をありがとう」消える昭和の匂い

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松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。

 遊園地のとしまえん(東京都練馬区)が2020年以降、段階的に閉園を検討していると報じられた。跡地にはハリー・ポッターのテーマパークが開業するという。TDRやUSJなど大手のテーマパークが隆盛を誇る中、昭和の匂いがする遊園地が消えていくのは何とも寂しい。これも時代なのか。

■プールで女児死亡の直後、ガラガラの園内

華やかなメリーゴーランド

 実は僕は昨年2019年9月にとしまえんを訪れたばかり。昭和40年代初頭、としまえんは夢のような場所だった。ジェットコースターにゴーカート、お化け屋敷、メリーゴーランドと子供が1日いても飽きないだけのパワーを秘めていた。

 幼稚園か小学校低学年の頃、家族に連れられ、初めてとしまえんを訪れた時、夢の世界にいるような気分だった。身長制限に引っかかってジェットコースターに乗れず、涙が出るほど悔しい思いもした。家族と1日中、真っ暗になるまで楽しんだのはいい思い出である。

 それからほぼ半世紀。50代で再び訪れたとしまえんは、東京ディズニーリゾートに慣れてしまった人間には、テーマパークとしては刺激が足りないものになっているのを感じた。としまえんプールで8歳女児が死亡する事故があった直後だったことが影響していたのかもしれないが、園内はガラガラの状態。(これで大丈夫なのかな)と心配になる程だった。

 昭和のテーストがする施設はノスタルジックで趣があるのだが、それを子供たちが喜ぶかと言えば、そういうものではない。昨秋に感じた危機感が、現実のものになってしまったのが悲しい。

■向ヶ丘遊園、小山ゆうえんち、としまえん…

昭和テースト満載のお化け屋敷

 1983年に東京ディズニーランドがオープンして、日本の遊園地の勢力図も変わってしまったように思う。向ヶ丘遊園(2002年閉園)、小山ゆうえんち(2005年閉園)と、首都圏のそれなりに有名だった遊園地が閉園に追い込まれ、その中にとしまえんも名を連ねるということである。

 巨大資本のテーマパークの寡占状態に中小の遊園地は閉園するか、思い切って資金を投じて生き残りをかけるしかないのかもしれない。閉園を選んだのがとしまえんで、100億円を投じて昭和レトロのテーマパークとして生き残りを狙うのが西武園ゆうえんちということであろう。

入り口から入るとこの長閑さ

 そうした光景を横目に圧倒的な勝ち組の東京ディズニーランド・東京ディズニーシーは4月から入場料金を大人7500円から8200円へと値上げする。大人2人でデートに行ったら駐車場料金を含め軽く2万円を超えてしまうが、それでも多くの人がやってくるのは、それだけ人を惹きつけるものがあるからだろう。

 企業の勝ち負けがここまではっきり示されるのは、もはや残酷ですらある。

 母親に手を引かれて訪れた昭和のとしまえんが消えるのは寂しいが、これも時代の流れと諦めるしかない。今はただ、としまえんに「幼い頃に夢をありがとう」と言いたい。

"としまえん閉園 かける言葉は「幼い頃の夢をありがとう」消える昭和の匂い"に2件のコメントがあります

  1. MR.CB より:

    》》ジャーナリスト松田様

    私も今朝の新聞で知り、なんとも寂しい気持ちになりました。小生は地方出身者なので子供の頃の思い出はありません。20代に今のかみさんと、そして家族でプールや昔ながらの居心地の良い遊園地として時々、のんびり安心して時間を過ごすことが好きでした。たしかに「レトロ」感覚の遊園地です。
    もちろん、東京ディズニーランドやUSJも、大人でも「非日常的」な時を過ごすことが出来ます。それなりに出費は伴いますが、世代を超えて楽しめる快適なスペースで
    す。大好きです!

    それぞれカテゴリーが違いますけど小生なら、子どもが小学生の低学年までであれば、男女を迷わず「としまえん」をお勧めします。もっと言えば、「あらかわ遊園」も小さな子どもたちにとっては最高のワンダーランドなのです。

    今回の問題(としまえんが無くなること)は、西武グループ経営陣の長期展望の欠如と経営方針の怠慢ではないでしょうか?きっと「としまえん」の必要性(価値)を理解し
    ているのだろうか?。いっそのことそうであれば、東京都に高値で売って欲しいとさえ思ってしまいます。

    1. 松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵 matsuda より:

      >>MR.CB様
       コメントをありがとうございます。

       夢を与える場所である遊園地も大人の経済理論、経済原則の支配下にあるということを感じさせる出来事ですよね。

       としまえんに来ていた子供達は皆、楽しそうにしていたので、オススメというのはその通りだと思います。TDRとはまた違った魅力があると思います。ただ、それが宣伝・広告の違いだったり、圧倒的な資本力を持つ競合企業の前にはどうにも戦いにならないといった感じだったりということが今回の決定に至った原因なのでしょう。

       僕が身長制限でジェットコースターに乗れず、「可哀想だから、他のアトラクションに乗せてあげよう」と、母が幼い僕の手を引いて園内をグルグル回ってくれたのを思い出します。そういう昭和の思い出が消えてしまうのは本当に寂しい限りです。

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