新宿駅南口で1月6日午後、男性が自殺する事件があり、その様子を写真撮影しSNS等にアップする事態が相次いだ。誰もが情報発信者になれる時代。全ての人にモラルが問われる時代になった。

■自殺者の撮影は死者の尊厳を傷つける行為

1人ひとりが倫理観を問われる時代

 報道によると自殺があったのは午後0時30分頃で、国道20号(甲州街道)にかかる歩道橋からマフラーのようなもので男性が首を吊ったとされる。救急隊員が駆けつけて現場はシートで覆われたが、それ以前にスマートフォンなどで撮影された写真がツイッターなどにアップされた。

 これに対しては「信じられない」「写真を向けること自体、人としておかしい」といった趣旨のコメントが並んだ。僕もそうしたコメントに100%同意する。

 自ら命を絶った人の姿にレンズを向けるのは亡くなった人の尊厳を傷つけるものであり、しかもそれを公開するなど倫理的に許されない行為だと思う。アメリカの人気you tuberが富士山麓の青木ヶ原樹海での自殺者の遺体を撮影した動画をアップし、それに対する非難が殺到したのは記憶に新しい。

 日本人は死に対して特別な感情を抱く。死者にムチ打つ行為は受け入れがたいものとされ、「死ねば誰でも仏になる」というメンタリティーは多くの人が共通して持っているのではないだろうか。

■1986年アイドル歌手の事件で問われたモラル

 こうした自ら命を絶った人の写真を公開することはメディアでもあった。アイドル歌手の岡田有希子さんが1986年(昭和61)4月8日、ビルから飛び降り、自ら命を絶った。翌9日、報知新聞(現スポーツ報知)は道路にうつ伏せに倒れ、血が流れ出ている岡田さんの写真を1面で掲載した。たまたま現場に居合わせた同紙の芸能担当記者が撮影したものであるという。

 当時、日刊スポーツ入社2年目だった僕は、その紙面を見てショックを受けた。スポーツ新聞はセンセーショナリズムで部数を伸ばしてきたのは事実だが(このようなことまでが許されるのか)(岡田有希子さんの尊厳を踏みにじる行為ではないのか)という憤りを感じたのである。

 案の定、報知新聞の報道姿勢は、他の媒体からの批判の対象となった。以後、スポーツ新聞でそのような写真が掲載されることは、なくなったように思う。

■誰もが情報発信できる時代

 新宿駅南口での出来事については、そういう時代なのだと思う。SNSがそれほど発達していなかった平成の初期は、一般の人が大衆(マス)に向けて情報発信することなどあり得ず、情報発信はメディアが独占的に有する権益であった。

 それが、今は誰でも簡単に世界に向けて情報発信ができる。だからこそ、かつてメディアに求められた倫理が、一人ひとりに対しても求められるのである。

 僕もこのHPで情報発信をしているわけで、そういう倫理観は持たなければならないと思う。写真だけでなく文章でも、人を不快にしたり、名誉を傷つけたりする表現は厳に慎まなければならない。それが情報発信という手段を持つ我々に課された使命である。

 新宿駅南口の事件を通じて、あらためて情報発信の難しさを感じさせられた。