三浦まり上智大学教授らが呼びかけ人となった「公的発言におけるジェンダー差別を許さない会」が12月30日、ジェンダーに関する2019年の政治家のワースト発言を決める投票を自サイトで開始した。候補の発言を見ると「なぜ、いけないの?」というものが多い。その一方で、社民党の福島みずほ議員の露骨な性差別発言は入っていない。表現の自由への恣意的な制約でしかない試みを、メディアが嬉々として報じている姿は異様である。

■朝日新聞や毎日新聞がこぞって取り上げ

この発言こそが問題じゃないの?

 朝日新聞や毎日新聞がこぞって取り上げたこの話題だが、「公的発言におけるジェンダー差別を許さない会」(以下、許さない会)が問題としたのは例えば、自民党の平沢勝栄衆議院議員の「LGBTで同性婚で男と男、女と女の結婚。これは批判したら変なことになるからいいんですよ。もちろんいいんですよ。ただ、この人たちばっかりになったら国はつぶれちゃうんですよ」という発言。

 これに対しては「遠回しな同性婚および同性愛者批判である可能性も否定できない。」と解説している。

 平沢氏は同性愛への批判ではなく、事実を述べているに過ぎない。個人が好きなように自分らしく生きることと、人としての集団の持続性は全く別問題である。

■子供を産んでと頼んだら「基本的人権を無視」

 もう一つ紹介しておく。桜田義孝衆議院議員の「お子さんやお孫さんにぜひ、子どもを最低3人くらい産むようにお願いしてもらいたい」という発言も槍玉に挙げられた。「出産は個人の生き方やリプロダクティブ・ヘルス/ライツに関わることであり、他人に指図されることではない。個人の生き方の選択の自由という基本的人権を無視するような発言。」と解説している。

 見ての通り、桜田議員は指図などしていない。「お願いしてもらいたい」と頼んでいるのである。これは少子高齢化の解消のための呼びかけであり、もとより「子供を産め」などと強圧的に言っているのではないし、国会議員が国民に出産を強要する権限などない。政策実現のために若い世代に訴えかけることも許されないと言うのであろうか。

■”言葉狩り”する集団 彼らこそが「自由の敵」

 「許さない会」の一連のやり方は、一時期、メディアに対して特定の団体が行っていた「言葉狩り」に相通ずるものがある。確かに、心身の障害や病気、職業に対する人権意識が希薄な表現は少なくない。そうした表現がメディアからなくなったことは好ましいことではあるが、それは表現の自由に対する制約と表裏一体のものであるから、慎重に取り扱われなければならない。

 性的マイノリティ、あるいは女性に対して、ネガティブな要素の発言は一切許さないというのが「公的発言におけるジェンダー差別を許さない会」の考えのようである。彼らこそが自由の敵であると思う。

 「許さない会」が実施するアンケートは、ジェンダーに対する自由な表現、政治的主張を「差別だ!」の一言で封じ込めるのに一定の役割を果たすであろう。彼らが政権を握った時に、我々は自由に発言することができなくなるのではないかという、拭いきれない不信感がある。「川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例」もそれと同根であろう。

■福島みずほ議員は? 小池晃議員は?

 最後に福島みずほ議員らの発言を記しておこう。彼女は今年6月30日にツイッターで「女性が未来を開く。おっさん政治をやめさせよう!」とツイートした。彼女のいう「おっさん政治」なるものの正体は分からないが、中高年の男性が行う政治は未来を開かないという決めつけなのか。性別・年齢によって、本来平等であるべき政治の世界への参加を制約する試みなのか。これは相当悪質な発言であると思うし、これこそが2019年のワースト発言であると思う。

 また、12月23日には共産党の小池晃書記局長が、強制わいせつで書類送検された初鹿明博議員を共産党が衆院選で応援したことについて記者から問われ「総合的判断です」と答えている。これは、強制わいせつの疑いを持たれた議員でもあっても、他の要素を加味すれば支援することもあり得るという趣旨に取れる。

 このような発言をワースト発言の選択肢に入れていないあたりに、彼らの主張の非合理性がみてとれる。