ジャーナリストの伊藤詩織さん(30)がTBSワシントン支局長だった山口敬之氏(53)に対して損害賠償を求めた裁判の判決が12月18日、東京地裁であった。鈴木昭洋裁判長は山口氏に対して330万円の支払いを命じるとともに、山口氏が提起した1億3000万円の慰謝料等を求めた反訴を棄却した。請求の一部が認められた伊藤氏だが、まだ一審段階。喜ぶのは早いと思う。

■伊藤氏は1100万円請求、山口氏は反訴提起

勝った、勝ったと浮かれていると…

 報道によると、伊藤さんの訴えは2015年4月4日に、意識を失った状態で性行為を強要され、肉体的・精神的苦痛を被ったというもので、1100万円の損害賠償請求をしていた。山口氏の行為が民法709条の不法行為であると主張したのであろう。

 これに対して山口氏は性交渉があったことは認めたものの、明らかに性交渉に誘ってきているものと理解した旨の主張をしていた。その上で、伊藤氏の会見などの発言で社会的信用が失われ、「名誉毀損、プライバシー侵害による不法行為」であるとして反訴提起したものである。

 伊藤さんは当初、刑事で告訴していたが、検察は不起訴処分。さらに検察審査会に不服申請したものの「不起訴処分は妥当」という判断が下された。今回は刑事ではなく、民事責任を追及するもので、東京地裁は伊藤さんの訴えの一部を認めたのである。

 伊藤さんが主張するような被害を実際に受けたのであれば、それは民事とはいえ、訴えが認められて良かったと思う。女性の性的自由を奪う行為が許されるはずもなく、本来なら刑事責任も問われてしかるべき。

■真相は藪の中 「勝った、勝った」はほどほどにした方が…

 ただ、両者の言い分は真っ向から対立していて、真相は藪の中といってもいい。しかも、まだ一審判決の段階に過ぎないから、裁判の行方も不透明である。山口氏は間違いなく控訴してくるであろうし、最終的には最高裁まで争われる可能性が高い。控訴審で山口氏がひっくり返すのは簡単ではないだろうが、その可能性はゼロではない。

 日刊スポーツの報道によると、『伊藤氏は「長かった…長かったです」と苦しい日々を思い起こし、泣いた。そして「私の見ているこの景色は、以前と全く違うもの…」』などと語ったという。しかし、まだ道半ばであり、旅の途中で「旅は苦しかった」などと言うのは賢い人間のすることではない。伊藤氏の望まない旅は否が応でも続くのである。

 一審判決ですっかり悪者にされてしまった山口氏だが、性的行為があった後に、メールで親しいやりとりがあったとも伝えられている。仮に山口氏の主張が事実であれば、伊藤氏がその後、訴えを提起した行為は許し難い。我々にできることは、裁判の行方を見守ることだけである。伊藤氏もその支援者も「勝った、勝った」と浮かれていないで、サッカーなら前半をリードして折り返した程度であることを、理解した方がいい。