立憲民主党の党憲法調査会(山花郁夫会長)は12月6日、「表現の自由の萎縮を懸念する芸術関係者からのヒアリング」を実施した。そこで在オーストリア日本大使館がウィーンで行なった展覧会「JAPAN UNLIMITED」に映像作品を出品した会田誠氏が、その内容から外務省の事業認定が取り消されたことについて説明。その内容がどうにも合理性を欠くものであった。

■日本の首相を名乗る人が「侵略戦争を始めた。ごめんなさい」

ハフポスト日本版から

 会田誠氏の作品は《The video of a man calling himself Japan’s Prime Minister making a speech at an international assembly》(2014)で、日本の首相と名乗っている人が、国際会議場で演説するという20〜30分の作品とされる。

 その演説の内容は「近隣の弱い国を植民地化し、侵略戦争を始めた。多くの人々を侮辱し、傷つけ、殺した。ごめんなさい」というもの。

 この内容に気づいたツイッターのユーザーが通報し、国会議員経由で外務省に連絡が入り、事業認定が取り消されたというのが簡単な経緯である。

■会田氏のヒアリングでの発言

 この点に関して会田氏はヒアリングで、以下のように述べた。便宜的に発言(1)、発言(2)とナンバリングした。

発言(1)「アルファベットSから始まる匿名のTwitterをやっている方が、国会議員さんに『こんなひどいものがウィーンで行われている』と僕の作品について伝えた。…一般の方だと思う。僕の作品の内容もほとんど誤解しているし、まず見ていない。僕の作品は、日本の首相と名乗っている人が演説する作品。20-30分のほんの一言を切り抜いて、『こんな発言をしている』と議員に伝えられた」

発言(2)「海外のアートファンは、いま日本の社会の問題に真剣に取り組んでいる作家の表現が見たい。それが国際交流なんですよね。きれいごとの富士山ではなく、もっと『おまえたちは何に悩んで生活しているのか、見せてくれ』と言われる。それが国際交流、現代美術でして…」

※ハフポスト日本版より

■芸術を理解できないものは黙ってろ!?

 発言(1)に関しては、芸術を理解できない(と会田氏が考える)人間は、その作品の作者に文句をつけてはいけないということのようである。会田氏の作品が不特定多数の人間に公開されている以上、それに対して誰もが批判をすることについて自由であるはず。それこそが表現の自由である。「芸術を理解できない人間はモノを言うな」という趣旨の発言をする者こそ、表現の自由の制約者である。

 発言(2)については、「きれいごとの富士山ではなく、もっと『おまえたちは何に悩んで生活しているのか、見せてくれ』と言われる。それが国際交流、現代美術」と言っている部分は、会田氏がそう思うなら、好きなだけやればいい。今回の件は誰も「その表現を止めろ」などとは言っていない。ツイッターで通報をした人の趣旨も「このような内容に外務省が事業認定すべきではない」というものに過ぎない。

 今回の件で会田誠氏が表現の自由の制約を受けていないことは明らか。外務省が事業認定を取り消したことは、会田氏に「その表現をするな」ということではないからである。認定がなくても会田氏は作品の公開は自由にできる。しかも会田氏は「外務省からお金は一銭ももらっていません」と話しているのであるから、通報者、国会議員、外務省の行為は表現の自由に対する制約にはなっていない。

■恫喝して黙らせようとした人が主張する”表現の自由”

 多くの人は、お上に楯突くタイプの芸術家が「事業認定してください」と言うことに違和感を覚えていると思われる。権威を否定しながら、権威からのお墨付きをくださいとねだっているに等しいからである。しかも、国益を損ねる作品を作っておきながら、その作品のお墨付きが取り消されたら「国益を損ねる」という主張は、論理的ではない。

 また、ツイッターで一連のやりとりを見ていた人間からすれば、表現の自由を主張する会田氏が自らに批判的な一般ユーザーを恫喝し、その表現活動を抑えようとしたことは見逃せない。表現の自由は芸術家だけが享受できるものではないことを、会田氏は知るべきである。

 こうしてみると、なぜ、このヒアリングに会田氏が出てきたのか理由が分からない。会田氏から意見を聞いて、立憲民主党は何をしたいのか。言う方も言う方なら、聞く方も聞く方というのが、正直な感想である。