田口淳之介氏は”早すぎる復帰”? 敢えて言う「早期の活動再開の何が悪い」

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松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。

 「KAT-TUN」の元メンバー田口淳之介さんが、大麻取締法違反(所持)の罪で有罪判決を受けた2週間後に芸能活動を再開させたことに対して、批判的な声が出ている。こういう”世間の声”には疑問を感じる。敢えて言う。「早期の活動再開の何が悪い」

■10月21日に判決、11月4日に活動再開表明

東京スポーツ電子版より

 田口淳之介さんは2019年10月21日にパートナーである小嶺麗奈さんとともに東京地裁から懲役6月、執行猶予2年の有罪判決を受けた。その2週間後の11月4日に活動再開を表明し、11月7日には配信シングル「Voices」をリリースしている。

 この点について12月2日付けの東京スポーツ電子版は「有罪判決を受けた直後にもかかわらず、このスピード復帰は世間を騒然とさせた。」、「有罪判決からすぐに復帰したことで『早すぎる!』などと猛批判を浴びた。」などと書き、日刊サイゾーは「判決からわずか2週間でのスピード復帰は前代未聞。ネット上では『せめて年内は謹慎しろよ』『本当に反省しているのか』と非難の声も上がっているが……。」などと書いている。

 2つのメディアとも、自分の口では語らずネット上の声などを引き合いに出しているのはどうかと思うが、そこはいい。

 僕個人のことを言えば、別にいいじゃないかと思う。執行猶予期間は活動禁止期間ではない。仕事をするのも控えるのも、本人が決めることである。

■判決から14日後の復帰表明の理由

 判決から14日後の復帰表明していることの意味を、東スポや日刊サイゾーはあまり理解できていないようである。これは判決の確定を待ったものと思って差し支えない。一審判決が出ても、検察が「量刑が軽い」と考えて控訴してくる可能性がある。そうなると舞台を東京高裁に移して裁判が継続するわけで、それを抱えつつ仕事をすることはできない。そこで検察が控訴せず一審判決が確定するのを待っていたのであろう。

 控訴提起期間は14日(刑事訴訟法373条)のため、田口淳之介さんの場合は控訴提起期限は11月4日。この日は振替休日のため、期間の計算の規定(同55条3項)の「休日」の適用は受けないはず。検察側が控訴しない、つまり判決が確定するのを待って活動再開を表明したのは間違いない。

■罪を犯さないことを条件として刑罰権を消滅させる制度

 そもそも執行猶予とは何か。これは「有罪判決に基づく刑の執行を一定期間猶予し、その間に罪を犯さないことを条件として刑罰権を消滅させる制度」(条解刑法第2版p52)である。その趣旨は「いつでもその執行猶予の言渡を取消し、実刑を執行すべき警告をもつて、被告人にその行動の反省と謹慎を要請する趣旨のものである。」(最高裁決定昭和26年10月6日)。

 執行猶予期間は反省と謹慎を要請するものであるから、世間は「芸能活動などとんでもない」というようなことを言うのかもしれない。しかし、執行猶予は最長で5年ある。その期間、仕事をせずに家に籠って反省のみの日々を過ごすことを最高裁が求めているとは到底思えない。謹慎、すなわち言行を慎みながらも仕事をする人は少なくないだろうし、両立が難しいというわけでもない。特に起訴事実が麻薬関連であれば、仕事をしないでいるより、反省の心を持って日々、仕事に精を出すことの方が更生に役立つ。

 そして、自分を待ってくれている人たち(ファン)のために働くことは、社会に対する大きな貢献でもある

 そのあたりを僕が青学でお世話になった刑法の齋野彦弥教授(現横浜国大法科大学院)は著書の中で「執行猶予取消の威嚇の下で、被告人の改善・社会復帰を社会内で図る」(刑法総論初版p338)と説明している。

■過去の自分と決別し、仕事に邁進を

 田口淳之介さんが何を考えているのか、僕が知る由もない。ただ、本人がHPの中で「これからしっかり前に進んで行ける様に、努力して参ります」と語っているのだから、薬物とは縁を切り、新たな人生を進もうとしているのは間違いないだろう。

 過去の自分と決別し、仕事に邁進していこうというのであれば、それはそれで好ましいことではないか。有罪判決を受けたから、とにかく世間の目を逃れ、目立たないようにしておこうという姿勢の方が執行猶予の本来の意味からは外れたものであると思う。

 だから、僕は田口淳之介さんの復帰を支持する。

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