女優の沢尻エリカ容疑者(33)が合成麻薬MDMAを所持していたとして、11月16日、麻薬取締法違反の疑いで警視庁組織犯罪対策5課に逮捕された。報道では午前中に家宅捜索を受け8時40分頃に感冒薬のカプセルに入っているMDMA2錠が見つかったのだという。

■合成麻薬MDMAを所持していた容疑

逮捕前夜の沢尻エリカ容疑者(JNNの画面から)

 以前からその言動が極端なことで知られる沢尻容疑者だけに、驚きはあるものの、その一方で「やっぱりな」という思いもある。TBS系のニュースでは逮捕前夜、自宅を出る時の様子がカメラに収められており、メディアにも情報は流れていたのであろう。

 合成麻薬MDMAは「エクスタシー」と呼ばれる薬物で、アッパー系に分類されるようである。どういう経路で入手したのか、まずは捜査の行く末を見守りたい。

■名誉毀損案件で動いた10年前

 僕はもちろん、沢尻エリカ容疑者と接点はないが、ちょっとだけ関係したことがある。2009年秋、沢尻エリカ容疑者サイドが日本の複数のメディアに対して名誉毀損による損害賠償請求を起こそうとした。総額で約30億円で、実はその相手に当時、僕が勤務する日刊スポーツも含まれていた。メディアにいれば名誉毀損の裁判はそれほど珍しくはないが、問題は彼女が訴えをスペインの裁判所に起こそうとしたことだ。 

 当時の夫がスペインの永住権を持っているということもあってスペインでの提訴ということだったようだが、過去に例がない事例とあり会社でも「どう対応すればいいのか」と頭を抱えていた。そこで当時、青山学院大学大学院法務研究科に在籍中だった僕に「法的にはどうなのか聞いてほしい」という話が来て、民事訴訟法の先生に話を聞くことになったのである。

■スペインの裁判所で日本のメディアを訴える奇策

 この件で専門的な話をすると、まず裁判籍(どの裁判所で裁判をするか)の問題がある。それは事実上、スペインの裁判所の判決の効力が日本国内に及ぶか、という問題でもある。 

 結論から言えば、それは難しいということであった。被告(日本のメディア)の住所地、不法行為地(名誉毀損されたとする情報の発信地)が、ともに東京であるため、本来、東京で提訴すべき事例でありスペインでの裁判籍は通常認められない。

 仮にスペインの裁判所が、問題の報道がネットでも閲覧できるためスペイン国内でも名誉毀損が行われているなどの理由でその損害賠償を認めたとしても、外国裁判所の確定判決について日本国内でその効力を認める条件が民事訴訟法118条で定められている。同条1号で「外国裁判所の裁判権が認められること」と定めており、前記の裁判籍の事情からそれが認められる可能性は低い。 

■沢尻側の主張を一蹴した民訴の教授

 義務履行地(賠償金を支払う場所=スペイン)でも裁判が認められるという考えに立てば118条1号の問題はクリアされる可能性が全くないわけではない。しかし、その場合は、同条3号が引っかかってくる。「判決の内容及び訴訟手続きが日本における公の秩序又は善良の風俗に反しないこと」。

 日本のメディアが裁判に応じるためには高い経費を支払ってスペインに出向かなければならない。これは相手に応訴の負担を強いる目的、相手が応じられないような外国で勝訴判決を得て日本国内で効力を発生させようというのは訴訟手続き上、公の秩序や善良の風俗に反するのは明らか。そのような判決の効力は認められないということだった。

 そうしたことをまとめて会社に報告書にして提出したが、結構、役に立ったという話は後から聞いた。 

■お騒がせ女優、被告人として法廷へ

 10年前、メディアを訴えると言っていた沢尻エリカ容疑者が、今度は刑事事件の被告人として法廷に立つことになりそうである。色々な意味でお騒がせな人と言うしかない。