昨今の日韓関係の悪化に関するNHKの世論調査に、不自然な内容が含まれていた。9月9日に午後7時のニュースなどで放映されたもので、「韓国が非を認めて、関係改善すべきだ」と考える人の選択肢がないというもの。これで正確な世論調査と言えるのか、公共放送としてのNHKの姿勢に疑問を覚える。

■日韓関係改善で歩み寄るのは日本政府だけという選択肢

NHKニュースの画面から

 放送された内容によると今回のNHK世論調査は9月6日~8日まで行われ、対象は18歳以上の2368人、方法は電話(固定・携帯 RDD)で、51%にあたる1216人から回答を得たという。放送された部分から日韓関係についての設問を書き取ってみる。便宜的に1、2の数字を付した。

問1:太平洋戦争中の徴用をめぐる問題や輸出国の優遇措置をめぐる問題などで対立が続く日本と韓国の関係についてどのように感じているか

問2:日本政府は韓国に対しどのような態度で臨むべきか

 問題は問2である。日韓関係が歴史上にないほどの険悪な関係になっているのはおそらく誰しもが感じていることであろう。それに対して日本政府はどうすればいいのかという問いかけ。2つの選択肢が示され、回答は以下である。便宜的にA、Bとした。

A:(日本政府は)関係改善のため歩み寄り必要 35%

B:(日本政府は)歩み寄ってまで関係改善急ぐ必要ない 55%

 これは日本政府がどうすべきかという質問であるから、問題がないと考える人もいるかもしれない。しかし、菅義偉官房長官は9月8日の民放のテレビ番組で、悪化している日韓関係に関し「全て韓国に責任がある」と明言している。そうなると日本政府の立場としては「関係改善は韓国が態度を改めるべきである」と考えていることになるのは明らか。その立場を支持する人の選択肢は「関係改善のために韓国政府が歩み寄るべきである」であろう(「関係改善の必要はない」という人も含む)。

 つまり、「関係を改善してほしい。しかし、それは韓国が歩み寄らなければならない」と考える人はこの問2では選ぶべき選択肢が示されていないのである。日本政府の立場を支持する選択肢が示されない世論調査にどのような意義を見出せばいいのか。

 具体的には次の選択肢を入れればいい。

C:(日本政府は)関係改善のため韓国政府に歩み寄りを求め(続け)る必要がある。

 これをなぜ入れないのか、入れないことをおかしいと感じないのか理解に苦しむ。

■日韓関係に懸念を持つ人68%の人に選びにくい選択肢

 実際、世論調査の回答者がどのように行動したかを分析してみよう。問1については以下のように回答している。

NHKニュース画面より

・非常に懸念 32%

・ある程度懸念 36%

・あまり懸念せず15%

・全く懸念せず 9%

 68%の人が多少なりとも心配しているということで、それは納得のいく数字である。そうした懸念を持った人は当然「関係は改善した方がいい」と考えるであろう。そうなると「B:歩み寄ってまで関係改善急ぐ必要ない」という選択肢は選びにくい。特に電話で聞かれたら、(韓国が歩み寄らなければ、仕方ないかな)と考えてBを選ぶ人はいるだろうが、関係改善する方(A)へ流れる可能性は否定できない。

 問1で懸念を持つ人が68%おり、関係改善については問2で「A:関係改善のため歩み寄り必要」が35%と半減したのは、おそらく「日本が歩み寄るぐらいなら関係改善の必要はない」と考えた人が多かったのであろう。それが少なくとも残りのおよそ半分の33%だったという判断には一定の合理性は認められる。

 しかし、実際には「韓国が大きく歩み寄るなら、日本も多少なりとも歩み寄るのは外交上、仕方ないかな」という数字も含んでいることを思えば、この数字はそれでも水増しされたものと言えるのではないか。

■日韓関係でどちらが悪いかをはっきり聞くべき

 こうした世論調査を行うのであれば、より端的に以下のような質問をすべきである。

・日韓関係の悪化はどちらの国に責任があると思うか

・日韓関係を改善した方がいいか

・改善するとして、どちらの国が歩み寄るべきか

 なぜ、こういう質問ができないのか。NHKに限らず、他の媒体の世論調査を見ていると、どこかに韓国に対する配慮があるように思える。そのような一方に肩入れすると言っていい姿勢が僕のような人間にとっては拭いきれない不信感につながっていることを、メディアは心すべきだと思う。