菅義偉官房長官が9月5日の記者会見で、東京五輪で韓国側が旭日旗の持ち込み禁止を求める動きをしていることに対し「旭日旗は国内で広く使用され、政治的宣伝とはならず、持ち込み禁止は想定していないと承知している」と述べた。この発言によりメディアは東京五輪では旭日旗を持って応援できるかのように報じられているが、事はそれほど単純ではない。

■川崎フロンターレの事件以後、掲げられない旭日旗

旭日旗の戦いはこれからが本番

 2017年5月以降、少なくともサッカーの試合において韓国が絡む場合は、事実上スタジアムで旭日旗が掲げられなくなっている。これは同年のアジアチャンピオンズリーグ1次リーグG組の川崎フロンターレー水原三星ブルーウィングス戦で日本のサポーターが掲げた旭日旗を巡って騒動になったこと(以下、水原事件)が関係している。AFC(アジアサッカー連盟)は川崎に罰金1万5000米ドル(約159万円)、1年間の執行猶予付きで1試合の無観客試合の処分を下した。

 川崎からの処分理由に関する質問状に対し、AFCは「旭日旗はいくつかの国や地域で掲出することは差別的であると考えられ、韓国で掲出することは攻撃的である」と回答している。すでに確定した決定がある中、東京五輪のサッカーで日本ー韓国戦が実現したとしてスタンドで旭日旗を振れるのか。

 まず、持ち込みを禁止しない時点で韓国側はAFCの決定を理由に旭日旗を排除するように求めてくるであろう。最終的な決定はIOC(国際オリンピック委員会)に委ねられるが、IOCが「我々はAFCとは考え方が違う」と旭日旗を守ってくれる保障などない。

■組織委員会は「まだ分からない」

 この点を東京オリンピック・パラリンピック組織委員会に電話をかけ、直接、聞いてみた。

松田:日本ー韓国戦で旭日旗を振って応援した場合、過去にAFCが同様の行為に対して処分をしていますからIOCが同様に処分する可能性はあるとお考えでしょうか

担当者:組織が全く違いますので。IOCの判断ということになります。

松田:FIFA(国際サッカー連盟)がIOCに「過去に旭日旗を掲出したことで処分をしたことがあるから、今回も処分してください」と言う可能性はあるわけですよね

担当者:可能性としてはあると思いますが、今の段階では明確なお答えができない状況です。

松田:持ち込み禁止リストの中に旭日旗が加わる可能性はありますか

担当者:それは分からないです。

松田:菅官房長官は「想定していない」(と承知している)と言っていますが、それでも旭日旗が持ち込み禁止リストに入る可能性があるのでしょうか

担当者:禁止するか、しないかということは、まだ分からない状況です。

松田:政府は「想定していない」(と承知している)と言っているのに、組織委員会が「禁止するかどうか分からない」ということは組織委員会が政府と異なる判断をする可能性があるわけですか

担当者:最終的にはIOCが判断しますので、国と組織委員会と東京都が決めたことを、IOCが最終的に承認して、それを発表することになります。

松田:IOCが持ち込み禁止リストに入れてくる可能性はあるわけですね

担当者:可能性としてはあると思います。

■政府の立場は組織委員会が適切に判断

 菅官房長官は水原事件の際にも「旭日旗は…大漁旗や出産、節句の祝い旗など、日本国内で広く使用されていると考える」と記者会見で語り、旭日旗の掲出に何ら問題がないことを明らかにしている。今回の官房長官の話もその流れにあると思われるが、組織委員会の話を聞く限り、政府は旭日旗を掲げて応援できることを保障した訳ではない。自国開催の五輪で、自国の伝統ある旗を掲げることが保障されていないとしたら、何とも悲しいことである。

 この点を内閣官房東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会推進本部事務局に聞いてみた。五輪・パラリンピックの旭日旗に関しては、組織委員会マターというのが基本的な立場。その上で政府としては組織委員会に対しては「協力、支援する立場です」で指導・監督する立場ではないという。つまり、組織委員会が旭日旗を持ち込み禁止リストに入れた場合、「それはダメだ」と決定を変えさせる権限まではないということである。

松田:官房長官は「持ち込み禁止は想定していないと承知している」と言われましたが、そういう報告を受けているということでしょうか

担当者:承知している、と官房長官はお答えしていたと思います。

松田:組織委員会はIOCが持ち込み禁止リストに入れてくる可能性はあると言っていました。そうなると、我々国民は旭日旗で応援することは保障されていないのだろうなと考えますが、いかがでしょうか

担当者:私も細かなことは承知していませんが、基本的には組織委員会において適切に判断することだと思っています。

松田:確認ですが、現段階では我々が旭日旗で応援することは保障されていませんね

担当者:我々が申し上げられるのは、官房長官が答えたことが全てということです。

 この問題はまだまだ先がありそうである。韓国側も、このままおとなしく引き下がるとは思えない。現段階で言えることは、旭日旗で応援できると思っているとしたら早計であるということである。