リクナビを利用した学生の内定辞退率を予測して他社に販売するサービス「リクナビDMPフォロー」(8月4日付けで廃止)の問題で、リクナビを運営するリクルートキャリアが9月6日、厚労省から東京労働局を通じて行政指導を受けた。この辞退率などの購入契約を結んだ企業は38社とされ、日本を代表するような大企業が名前を連ねている。

■リクナビ事件でトヨタなど38社がデータ購入か

今も昔も…就活の闇

 「リクナビ事件」就職活動に取り組む学生にとっては許し難い事件であるが、そもそもこの内定辞退率の予測を買っていた企業があるからビジネスとして成立していたわけで、買う方の企業のモラルのなさも批判されてしかるべき。9月7日の時点で報道によるとトヨタ、ホンダ、東京エレクトロン、レオパレス、YKK、三菱電機、大和総研HDなどがデータ購入したとされている。

 学生がこの情報は外に漏れないはずと信じて利用していたリクナビのデータを買うことに心の痛みはなかったのか、各企業の担当者に聞きたいところである。

 僕は1985年に就職したが、当時の就職活動は大学4年の10月1日(1984年)が解禁日。実際は守る企業は少なく、ほとんどが夏頃から選考を行なっていた。ただし、マスコミは就職解禁を厳しい姿勢で報じていたことから厳格に守っており、僕のようなマスコミ志望者は一般企業の内定を貰ってから10月1日のマスコミの就活解禁に臨むというのが一般的だった。日刊スポーツ新聞社も、その点は厳格にルールを守っていたのである。

■”ハイテクの巨人”の社員、解禁日前に「今ごろ何しにきた?」

 1984年7月、大学4年生だった僕は「ハイテクの巨人」などと呼ばれた会社の日本法人への就職を希望していたが、何の伝手もない。そこで直接同社に電話をし、人事のセクションの女性と話をした。「話を聞きたいのでOBを紹介してほしい」ということをお願いしたが担当者は「10月1日が就職活動解禁日ですから、それ以前に就職に関することは一切行っておりません。10月1日にいらしてください」と言うばかり。「ハイテクの巨人」は「モラルの巨人」でもあるのだろう…と僕は思い、きっとマスコミと同じように10月1日解禁を厳格に守っているに違いないと考えた。

 何日かして大学の就職相談室に行って相談すると、同社にOBが在職しているということが分かり(連絡してみないか?)ということになった。教えてもらった番号に連絡するとOBが会ってくれることになった。

 翌日、当時は六本木にあった本社へ行った。忘れもしない、OBはK・Yという名前の細身の30代ぐらいの方だった。応接室に通されて挨拶して椅子に座った瞬間、K・Y氏は面倒くさそうにこう言ったのである。

「お前、今ごろ何しに来たんだ?」

 大学の後輩にこのセリフである。びっくりして「人事の方に10月1日に来てくれと言われましたが、その前に御社のことを教えていただければと思いまして」と言うとK・Y氏は呆れたようにこう続けた。

KY:今頃来ても、もう選考は全部終わってるから。

松田:人事の方には10月1日からと言われてますが。

KY:それは表向き。正面から聞かれれば、そう言うしかないだろ。

松田:もう、遅いということでしょうか。

KY:とっくに終わってるから。

松田:はあ…

KY:志望理由聞こうか? 言ってみろよ

松田:(志望理由を語る)

KY:あ、そう。何かあったら、連絡するよ。

■各企業の意識の変化には時間が必要なのか

 彼はまさに僕に「空気嫁」と言うK・Yさんだった(笑)。当時はこの会社は大変な人気だったが、僕はすっかり熱が冷めてしまった。「社会を欺く会社に、未来などあるはずがない」と思い、その後、マスコミ受験に力を入れた。運良く日刊スポーツ新聞社に拾ってもらって、今があるというわけである。

 こうして考えると、大企業のモラルのなさは今に始まったことではない。いい学生を採用したいという気持ちは分かるが、企業の社会的な使命を考えるとその行動は慎重であるべき。企業のコンプライアンスが叫ばれる時代だが、「リクナビ事件」のようなことがあると、各企業の意識が変わるにはまだまだ時間が必要と感じさせられる。