横綱白鵬(34=本名:ムンフバト・ダバジャルガル)の日本国籍取得が2019年9月3日付けの官報で告示されことが一斉に報じられた。この報道を見て「あれ?」と思った人がいるのではないか。以前は日本国籍取得を「帰化(きか)」と書いていたが、テレビや新聞でさっぱり見なくなった。実はこれには理由がある。

■各メディアの報道に「帰化」の語がなく

官報にははっきりと帰化の文字

 白鵬の帰化を告示する官報には以下のように記されている。

左記の者の申請に係る日本国に帰化の件は、これを許可する

 官報にははっきりと「帰化」と書かれているのである。ところが、各メディアの報道を見ると「帰化」という言葉は一切出てこない。

「横綱 白鵬が日本国籍を取得」(NHK)

「横綱白鵬が日本国籍を取得 協会で親方資格も 大相撲」(産経新聞)

「白鵬が日本国籍を取得 引退後も相撲協会に残留可能に」(朝日新聞)

■以前は使われていた「帰化」がなぜ

 以前は各メディアとも官報の告示そのままに「帰化」という単語を頻繁に用いていた。ところが1999年頃から「帰化」という単語を使わない傾向が出てきた。僕が日刊スポーツ新聞社在籍当時、編集局でそのようなお達しが回ってきたのである。

「帰化」は原則不使用とされている

 なぜか。帰化は国籍取得という意味で用いられるが、別の意味もある。「君王の徳化に帰服すること」(広辞苑第7版)。つまり「日本に帰化」というのは「外国人が天皇陛下の徳化に帰服すること」という意味に取れるというのである。「これは好ましくない」ということで「国籍取得に言い換えろ」というのが編集局からのお達しであった。

 当時の説明では「帰化」という言葉にメディアに対して在日の外国人団体からの圧力があったということであった。真実のほどは分からないが、(ありうる話だな)とは思っていた。

 新聞記者が記事を書くときは、「記者ハンドブック」(共同通信社発行)の基準に沿って書く。最新の記者ハンドブック(第13版)の494ページには以下のような記述がある。

・帰化→(原則として)国籍取得

・帰化人→渡来人

【注】帰化は朝廷の支配下に入ることを意味する。教科書は中国、朝鮮から古来に日本に渡ってきた人を「渡来人」としている。

■共同通信 記者ハンドブックは帰化を認めず

 このように共同通信の記者ハンドブックには原則不使用とされたことで、おそらくすべてのメディアが「帰化」という単語を使っていない。日本政府が使用する正式な単語がメディアには一切出ないのは、そのような理由がある。

 日本政府は「帰化」を「日本国籍の取得」という意味で使っているのは明らかで、「朝廷の支配下に入る」という意味で使っていない。それなのにメディアは日本古来から用いられてきた「帰化」という単語を、特定の集団に「忖度」して、消し去ろうとしているのである。

 自分たちで「表現の自由」を放棄しておいて、何が「表現の自由」だよ。