京都アニメーションへの放火事件で京都府警は2019年8月27日、新たに犠牲者25人の名前を公表した。 これを受けて主要メディアも続々と実名で報道したが、京アニの代理人弁護士は「大変遺憾」というコメントを発表。朝日新聞は報じる時に実名報道の重要性をアピールしているが、加害者が在日韓国・朝鮮人の時に実名を報じないことの矛盾をどう考えているのか。

■「尊い命が奪われた重い現実を共有」のため実名報道

毎日新聞は新井浩文被告の実名を報じている

 朝日新聞は京都府警の公表を受けて8月28日付けの朝刊で報じるとともに、ネットでも公開している。遺族側が公表を希望していないという事情もあるが、あえて実名報道することについて、以下のような説明をしている。

 朝日新聞は事件報道に際して実名で報じることを原則としています。犠牲者の方々のプライバシーに配慮しながらも、お一人お一人の尊い命が奪われた重い現実を共有するためには、実名による報道が必要だと考えています。(朝日新聞 DIGITAL8月28日公開)

 朝日新聞はそうした使命感のようなものを持って実名報道しているのであろう。その点の是非については今回は立ち入らない。問題は実名報道が重要であると考えるなら、それを貫けということである。

■新井浩文被告の本名「朴慶培」は隠された

 俳優の新井浩文が2月1日に強制性交の疑いで逮捕され、同21日に起訴されたのは記憶に新しい。この新井浩文被告は在日朝鮮人三世(現在は韓国籍と言われる)であり、本名は朴慶培である。ところが朝日新聞は調べた限り実名報道せず、通名で押し通している。サイト内検索で「朴慶培」を入力してもヒットしない。一方、毎日新聞、産経新聞は新井浩文(本名・朴慶培)と実名報道している。

 朝日新聞は「お一人お一人の尊い命が奪われた重い現実を共有するため」に実名報道が必要であるという。しかし、強制性交という女性の尊厳を踏みにじる許し難い犯罪という重い現実を共有する必要がないと考えているのか。あるいは、共有する必要はあるが実名報道の必要はないということなのか。

■在日韓国・朝鮮人への差別につながるから実名報道なし?

 朝日新聞は犯罪に加害者の国籍は関係ない、報じれば在日韓国・朝鮮人に対する差別につながりかねないという考えから実名報道をしないのかもしれない。

 しかし、被告人の国籍はどうでもいい要素ではない。外国人による犯罪なのか、日本人による犯罪なのかは、事件の性質を考慮する上で重要な要素となる。報道によって重い現実を共有するというのであれば、被告人のバックボーンを正確に伝え事件の全体像を把握できるようにすることは避けて通れないはず。

 また、産経新聞も毎日新聞も、記事を見る限り国籍には触れていないが、実名を出すことによって国籍が想像がつき「やっぱり在日韓国・朝鮮人は犯罪者が多い」と考える人はいるであろうし、それによって差別が助長されるかもしれない。しかし、報道をどう受け止めるかは個人の自由。生じかねない差別を事前に排除するために実名を報じないということは、特定の国籍を持つ集団の利益の方が、朝日新聞が考える実名を報じることのメリットを凌駕するということになる。この結論に誰が納得できるというのか。

■子供でも分かる朝日新聞のダブルスタンダード

 シンプルに考えてみよう。大量殺人事件の被害者の実名は遺族の意向に反して報道し、強制性交で女性の尊厳を傷つけた加害者の実名を報じないことは、おそらく多くの人がおかしいと感じるであろう。「事件報道に際して実名で報じることが原則」としているのに、なぜ、在日韓国・朝鮮人による強制性交の逮捕・起訴は例外になるのか。こういう子供でもおかしいと感じる二重基準が、朝日新聞の信用できないところである。