朝日新聞 DIGITAL(電子版)が8月23日22時31分に「対立泥沼化、韓国人客が激減 観光地『いつまで続く』」という記事を公開した。日本と韓国の政治的な対立により韓国からの観光客が減っていることについて扱ったもの。記事によると福岡県柳川市で水郷を巡る観光船「どんこ舟」を運航する会社では、8月の観光客がゼロであったという。減少しているのかもしれないが、1人もいなくなることなどあるのだろうか。取材対象に確認してみると、担当者は「ゼロではありません」と断言した。一体どうなってるの?

■水郷を巡る観光船「どんこ舟」、年間で40万人以上が利用

またやったのか、朝日!

 日本が安全保障上の輸出管理の優遇対象から韓国を除外する措置(ホワイト国からの除外)等による日韓の対立は、韓国内で日本への観光をやめようという動きにつながっていることは多くのメディアが報じている。その影響からか、7月の韓国からの訪日観光客は前年比で7.6%減少した(日本政府観光局=JNTO)。

 朝日新聞はそうした韓国からの観光客の減少について影響を受けている企業に取材し、記事にまとめている。最初に紹介しているのが「どんこ舟」を運航する「大東エンタープライズ」の事例。

水郷を巡る観光船「どんこ舟」が人気の福岡県柳川市。市内に4社ある運航会社の一つ「大東エンタープライズ」によると、8月の韓国人客はゼロで、9月も予約がまったく入っていないという。責任者は「船の運航回数も半分ほどに減らさざるを得なくなっている。船頭たちの給料にも影響が出る」と話す。~(8月23日公開朝日新聞 DIGITALより)

 この川下りの総利用客数は昨年が約42万2000人で、8月は2万7000人前後である(2018年観光動態調査:柳川市観光課)。運航会社が4社だというから、平均すると8月は1社あたり7000人程度という計算になる。その中に韓国人が1人もいなかったということがあるのだろうか。

■韓国人ゼロは運営する飲食店、どんこ舟は「ゼロではない」

 取材先として紹介されている大東エンタープライズのHPにあった問い合わせ先に電話をかけ趣旨を伝えると、担当者が対応してくれた。

松田:記事によると、8月の韓国人客はゼロであったということですが、本当でしょうか

担当者:ウチが「どんこ舟」と一緒に、うなぎ屋もやっています。うなぎ屋の方は確かに8月は韓国からのお客様はゼロです。「どんこ舟」の方に関してはマックス時の状態からすると、1割に満たない程度です。激減しています。

松田:そうすると、どんこ舟の韓国からの観光客がゼロというのは…

担当者:それは違いますね。どんこ舟の韓国人客はウチについてはゼロではありませんでした。激減はしていますが。

松田:記事はご覧になったと思いますが、「ちょっと話が違うんじゃない?」という感じでしょうか

担当者:記事では「責任者によると」となっていましたが、社長が取材を受けていたみたいで、その場に自分がいたわけではありません。ですから、どういう話をしていたのか分かりませんが、多少違う部分があるかなとは思います。(韓国人が)減っていることには違いはないのですが。

■朝日新聞の記者は確認という作業をしていないのか

 どんこ舟は柳川市の貴重な観光資源であり年間42万人以上利用するというのであるから、柳川市を訪れた観光客からすれば外せないポイントであろう。それがゼロになるというのは考えにくい。記者なら話を聞いた段階で「いくら何でもゼロではないでしょう」と、確認すべきだと思う。一方、飲食店に関しては、他の多くの店舗と競合する部分もあり、訪れる母数の違いも考えればゼロであっても、それはありうる話と判断することが著しく合理性を欠くわけではない。

 そのあたりをしっかりと確認して記事にするのは、記者の最低限の務めである。それとも、日韓対立のあおりをで日本企業が大打撃を受けているということを強調したいがために、故意に事実と異なることを書いたのか。そうではないと信じたいが。

■どんこ舟のハイシーズンは春と秋、8月は下から2番目

2018年観光動態調査:柳川市観光課より

 なお、担当者によると「どんこ舟」の客は韓国人が5割前後を占めるそうで、そのため、8月は全体の利用者が半分程度に減っているという。

 もっとも、「どんこ舟」のハイシーズンは春と秋で、8月は月別の利用者数を見ると2017年、2018年と連続で下から2番目であった。2018年は3月の利用者数が最も多く、およそ5万人に達し8月の2倍近い数字になっている(2018年観光動態調査:柳川市観光課、グラフ参照)。

 8月はもともと利用者が少ないという事情が記事で紹介されていないのも、世論のミスリードにつながる可能性があるように思う。