日本ではあまり報じられていない河野太郎外相の行為が、ネットで話題になっている。8月21日の北京での日韓外相会談に先立ち、同外相は日韓の取材陣に向かってカメラのメーカーを聞いたのである。これが日本製品不買運動が吹き荒れる韓国でニュースとして扱われ、「日本のブランドの優位性を示したと考えられる」などと報じられたもよう。この小さな出来事から見えてくるのが、河野外相の政治家としてのセンスの良さである。

■韓国のテレビで報じられた河野外相の雑談

河野外相、GJです

 河野外相は会談前に韓国の康京和外相を待つ間、日本と韓国の報道陣が待ち構える方へ近づき、話しかけた。「それは何? キヤノン? それはニコン。キヤノンが2人だね」。

 何気ない会話のように思えるが、これは韓国の報道陣を感情的にさせるに十分だったと思われる。テレビのニュースで扱われ、日本のブランドの優位性を示したかのように見せるパフォーマンスと受け取られたように報じられた。

 今、韓国では日本の輸出管理の厳格化に対する反発から日本製品の不買運動が盛り上がっている。アサヒビールやユニクロなどが標的になっているようであるが、そういう時期に、世論を煽り立てる韓国メディアが取材の時にキヤノンのカメラを使っていたとなれば(あくまでもなれば、の話)、韓国の国民のメディアに対する反発が強くなるのは必至。そのあたりを計算に入れていたのは間違いないであろう。

■その後のつぶやきまで含めたパフォーマンス

 河野外相はその後、ツイッターでこうつぶやいている。「カンギョンハ長官を待っている間、前の晩長城に一緒に上がった日本人記者と雑談してたら、その中に韓国の記者も混じってただけ。(以下略)」。

 大事な会談の前に報道陣のカメラのメーカーを聞く意味などないと思うが、このつぶやきまで含めてのパフォーマンスだと思う。5ちゃんねるなどでは「『そのカメラはキヤノン?』河野外相、韓国人記者にカメラブランドを聞いてしまう」というスレッドが立ち、あたかも韓国人記者に対して聞いているように扱われている。しかし、実際に映像を見ると日本語でやりとりしているから相手は日本人記者との会話なのであろう。

 大事なのは日韓の報道陣が同じ場所にいて、報道陣の方はカメラに映らないから誰に話しかけたか分からないという点。5ちゃんねるのスレ立て担当者も「話しかけたのは韓国人記者」と決めつけているのだから、韓国の国民が誤解する可能性は十分にある。

 こうした曖昧な状況を利用して、あたかも韓国人記者が日本製のカメラを使っているかのような印象を与えることに成功。そのことは「韓国の不買運動なんて痛くも痒くもない」という間接的なアピールにつながり、韓国の国民に対して、常に暴走気味の韓国メディアに不信感を抱かせる効果も期待できる。

 もし「外交的な欠礼」という攻撃が韓国側からなされても「いや、日本人記者に言ったんだよ」と反論できるから、自分が傷つくこともないという保険付きなのはお見事と言うしかない。

■コワモテがあるからこその変化球

 韓国の日本製品不買運動が日本の企業にどれだけダメージを与えたかは分からないが、日本として「やめろ」という筋合いのものでもないし、「やっても効かないよ」と言うのもいたずらに相手を刺激するだけの悪手。日本としては静観するしかない状況だが、それを会談前の曖昧な状況を利用して韓国の不買運動に有効な打撃を与えている事実は見逃せない。

 もっとも、こうした、ある種「小賢しい」方法が有効打になるのは、河野外相が一本、筋が通っているから。いわゆる徴用工問題への対応で7月19日に駐日韓国大使に対し「極めて無礼だ」と強い口調で非難したように、強く対応すべき時は、これまでの日本の外相にないぐらい強い対応をしている。そうした硬軟使い分けるところが、政治センスの良さ。チェンジアップを有効にするのは、人並み以上の速球を持ってこそ、ということと同様であろう。