常磐自動車道であおり運転をし、会社員に傷害を負わせた容疑で逮捕された宮崎文夫容疑者の犯行について、若狭勝弁護士が8月19日の日刊スポーツ電子版にコメントしている。元東京高検検事の見立てなので、僕の考えより遥かに説得力があると思うが、「それはどうなのかな」と思える部分もないわけではない。

■若狭勝弁護士は横領を主張、「あらゆる法令を駆使」で詐欺罪も?

若狭勝先生が日刊スポーツにコメント

 若狭弁護士は宮崎文夫容疑者と共犯の喜本奈津子容疑者について考えられる罪状を挙げているが、刑法犯についてだけ書き抜く。

(1)傷害罪:常磐自動車道で男性会社員(24)に傷害を負わせた。

(2)横領罪:ディーラーから借りた車を期限内に返却しなかった。

(3)傷害幇助(喜本奈津子容疑者):犯罪行為を助長して、被害者を心理的に追い込んだと判断した場合に成立。

 (1)については僕と同じ考えなのでいい。(2)は僕は1項詐欺(刑法246条1項)としたが、若狭弁護士は横領罪(252条1項)としている。一般的には「他人の財物を横領するため詐欺的手段を用いても、また、横領後、財物を確保するため詐欺的手段を用いてその返還を免れても、いずれも財物の占有の移転や交付がないから、詐欺罪は成立しない」(条解刑法第2版)とされる。ポイントは「占有の移転や交付がない」という部分である。

 若狭弁護士は宮崎容疑者がディーラーからの返却要請に「気に入ったので買うつもり」「仕事の都合で返却に時間がかかる」などと応じなかったことが、詐欺的手段を用いて返還を免れているから上記の解釈に従って単純横領罪と判断したのであろう。つまり占有の移転(SUVの交付)は通常の委託信任関係に基づいて行われているという判断。

 ただ、本件の場合、3日間の約束で借りたのに2000km以上走行していること、22日後に世間で騒ぎになってから代理人に返却させるなどの犯行態様であれば、最初から返還の意思などなく、詐取するつもりであったのではないかと思われる。欺罔による財物(SUV)の占有の移転がなされた事案と考えられる。

 SUVの占有の移転が宮崎容疑者の欺罔によってディーラーの錯誤に基づく交付であったと解釈することは、決して無理ではないと思う。山本順三国家公安委員長はこの件について8月15日の閣議後会見で「言語道断。あらゆる法令を駆使し、抑止に努める」と厳しく取り締まる方針を示していることを考えると、1項詐欺罪はあるのではないか。なお、法定刑は単純横領罪が5年以下の懲役、詐欺罪が10年以下の懲役である。

■宮崎・喜本両容疑者の息の合った連係プレー、共同正犯では?

 喜本奈津子容疑者について幇助としている点については、若狭弁護士は「犯罪行為を助長し、被害者を心理的に追い込んだと判断されれば、ほう助罪が成立する可能性がある」としている。映像を見ると停車した車から、まず、喜本容疑者が出て携帯電話で撮影を始め、被害者の車の進路を塞いでいる。被害者の車が発進できないであろう状況が確認できてから宮崎容疑者が運転席から出てきている。

 喜本容疑者が被害者の自動車を止める役割を負っていると僕には思える。撮影をしているのは、例えば、一旦停めた車が発進して逃げた場合や、相手が気が短く先に殴りかかってきて反撃した時に「正当防衛だ」と主張する場合等の証拠とする意味合いもあるのかもしれないが、それ以上に相手を威嚇する目的もあるように思える。普通の女性なら、自動車の前に立ちふさがった場合、相手の男性運転手が怒ることを恐れるであろう。それを全く恐れない様子を見せることは、(私には怖い男がついているのよ)という無言の圧力になる。

 そうした様々なことを考え合わせると、この犯行は宮崎・喜本の両容疑者による犯行であり、幇助ではなく共同正犯の事案であると思う。

■真相解明はこれから、悪事すべてを法廷で明らかに

 いずれにせよ、事件はこれから詳細が明らかになってくる。宮崎容疑者は当たり屋をしていたのではという情報もネット上では飛び交っており、実際、短期間のうちに何度も大きな事故を起こしていたようである。彼らの悪事を法廷で明らかにするよう、検察官には頑張っていただきたいと思う。