仕事柄、日々、多くの外国人と接している。講師をしている時に意識しているのは極力、政治色を出さないこと。政治的に微妙な問題を話さなければならない場合もあるが、そういう時は「僕の政治的主張は一切口にしません。事実だけをお話しします。それに対する評価は皆さんがしてください」と断って話している。そのお陰か留学生と政治的な問題でギスギスしたことは一度もない。

■危うい日韓関係、しかし「日本は静かですね」

日韓関係は過去にないような状況へ進んでいる

 昨今、日韓関係が危うい。徴用工の問題から始まり、今は日本側の半導体などの輸出規制があり、さらに輸出上の手続きを簡素化する優遇措置を取るホワイト国からの除外の問題で、韓国は反日の機運がヒートアップしているようである。

 1週間ほど前になるが、韓国からの留学生と話す機会があった。授業前なのでそれほどナーバスになることなく、世間話の中で「今は日韓関係が緊張しているから、韓国の友達から、『いつまで日本にいるんだ』みたいに言われないか?」と聞くと、彼はこう答えた。

 「本当に大変です。『帰ってこい』とか言われます。でも、日本は静かですね。韓国では大騒ぎなのに、日本では本当に何もないかのように静かなのに驚きます」。

 僕も意外な反応に驚き「日本は韓国と違って、政治でヒートアップするということがあまりないからね」と、無難な言葉を返しておいた。

■韓国にも温度差あるはず、冷静に粛々と対応を

 彼の言葉を聞いて、僕自身も少しばかり思うところがあった。僕を含め、日本人の多くは韓国人全員が反日で一つになって敵意を剥き出しにしているような印象を持ちがちである。しかし、当然のように韓国の国民にも温度差があるわけで、それらを十把一絡げにして「韓国は国民全員が反日で凝り固まっている」と考えるのは状況判断を誤らせるのではないかと思った。彼にはそれ以上聞かなかったので政治的な部分の真意がどこにあるかは分からないが、人間同士の会話として、ごく常識的な反応が返ってきたということは確かである。

 ちなみに、徴用工への対応・輸出規制・ホワイト国からの除外という一連の日本政府の政策を僕は明確に支持する。国民の財産や安全保障に関わる部分であるから絶対に妥協すべきではなく、現在のように粛々と対応していけばいい。

 朝日新聞に代表される「輸出規制を即刻やめろ」というような主張に政府は耳を貸す必要はない。ただし、ネットなどの一部にある感情的に相手国を攻撃するようなことはすべきではない。そのような方法やそのベースになる考えには、僕は与しない。

■中国の政治の壁を感じた、届かなかったメール

 政治を感じたのはもう1件ある。7月の初めぐらいに、中国人の大学院生とメールで連絡を取った。昨年、日本語学校で教えていた女子学生で、非常に日本語能力が高い生徒だった。春先に彼女と連絡を取り、彼女が書いた作文を他の学生に模範解答として示したいので、そのお願いをして許可を得ていた。今年、実際にそれを授業で使用したので報告とお礼のメールを出したのである。

 ところが彼女からの返信がない。(彼女も忙しいのだろう)と思っていたら、10日ほど経って返事があった。返信が遅れた理由が、何とも政治的なものであった。彼女は事情があって中国に帰国していたせいで、Gmailが使えなかったというのである。韓国の仁川空港に降りたってPCを開き、ようやくメールを見ることができたという内容が書かれていた 

 中国政府はgoogle検索ができないようにしてあるのは有名な話。それはGmailも使えないことを意味している。彼女もそこまでは想定していなかったようで「まさかGmailまでとは…」と驚いた様子であった。

 日本に留学する中国人学生はGmailのアカウントを簡単に作れる。国内での連絡なら、これで十分。しかし、帰国した時にその学生も僕自身もあらためて政治の壁を感じさせられたという話である。

 こうした国際政治の影響を微妙に受けつつ仕事をしていると驚かされることは少なくない。そして、ダイレクトに影響を感じることはエキサイティングなことでもある。そう前向きにとらえて、仕事をするようにしている。