安倍晋三首相のG20の夕食会での発言が話題になっている。大阪城が約90年前に再建された時にエレベーターを付けたことを「大きなミスを犯してしまいました」と言ったことについて、「バリアフリー軽視」などの指摘が出ているのである。

乙武洋匡さん、それは言葉狩り?

 首相の発言は大阪城が「約90年前に16世紀のものが忠実に復元された」と説明した後で、「しかし一つだけ、大きなミスを犯してしまいました。エレベーターまでつけてしまいました」というものである。「忠実に復元した」と言いながらも、16世紀には存在しなかったエレベーターを設置してしまった、という矛盾をジョークとして語ったものであることは子供でも分かるだろう。

 しかし、作家の乙武洋匡さんは「朝から、とっても悲しい気持ちになる」とツイートした。朝日新聞はさっそく記事で叩いているが、こういうメディアのやり方に僕はこれ以上ない嫌悪感を覚える。乙武さんも作家を名乗るのなら日本語はよく理解できるであろう。安倍首相が「障害者が上り下りできないように、エレベーターを設置しない方が良かった」と言っていると感じたとしたら、語学力に問題があるから作家の看板を下ろした方がいい。

 乙武さんが自らの障害を克服して、強く生きている姿は多くの人を勇気付けた、その功績は小さくない。しかし、これはもう、弱者が弱者の地位を利用して「おれが気に入らないから、その発言は許さない」という言葉狩りの類である。バリアフリーとか、障害者が住みやすい社会とか、誰もが批判することができないという状況を背景に、相手の発言を曲解して攻撃するのはまさに弱者による脅し。これに便乗した朝日新聞の記事は「批判されることのない弱者の立場」を錦の御旗にして、気に入らない相手を攻撃する構図でしかない。

 確かに障害を持つ人々、差別に苦しんできた人々に対しては特段の配慮が必要であり、そうした人々が幸せに生きられるように社会全体がケアしなければならない。だが、そうした守られるべき人々はオールマイティーのパワーを持ち、批判されることのない特権的地位に就いたわけではない。障害を持つ人々、差別を受けた人々も国民の一人として、社会に対する責務を有する。安倍首相の言葉を不快に感じたとしても、その趣旨が社会福祉を否定するような内容でないことはしっかりと理解すべきだし、できるであろう。自らの発言が、一部のメディアに政治利用されることの重大性を自覚してツイートしてほしい。

 乙武さんがツイートで言ったことに対して、僕はこう言いたい。今回の報道を見た時も、2、3年前に乙武さんの人間として恥ずべき行為の数々が伝えられた時も、僕は「朝から、とっても悲しい気持ちになった」。