自宅で長男の熊澤英一郎さんを包丁で刺したとして殺人未遂容疑で逮捕された元農水省事務次官の熊澤英昭容疑者について、事件の背景が伝わってきた。朝日新聞の報道では、隣接する区立小学校で運動会が開かれており、「運動会の音がうるさい」と英一郎さんが不機嫌になるのを見て「怒りの矛先が子供に向いてはいけない」と思い、その数時間後に殺害したという。

聞くだけで辛いニュースもある

 読売新聞によると、日常的に家庭内暴力を繰り返す英一郎さんに対して「殺すしかない」と記した書き置きが発見されたとのこと。「周囲に迷惑をかけてはいけないと思い、長男を刺した」と供述しているとも伝えられている。

 伝えられた内容を見ると、区立小学校の生徒や周囲の人への危難を避けるための緊急避難(刑法37条1項)の成立の可能性がありそうだし、自身と妻への急迫不正の侵害に対する正当防衛(刑法36条1項)が成立する可能性もないわけではない。

 たとえば、英一郎さんが「今から子供たちを殺してくる」と言って包丁を持って家を出ようとしたのでやむなく刺したとか、あるいはそれを止めようとしたらもみ合いになって刺したとか、そのような状況であれば違法性阻却事由が成立する可能性はある。

 詳細な状況が分からないから何とも言えないが、熊澤英昭容疑者の行為について、違法性阻却事由があるのかという点が裁判での焦点になるのは間違いない。

 いずれにせよ子供を殺すしかないと考え、刺殺することがどれだけ辛いことか。想像するだけで胸が痛む。