人生を賭けた決断、西野朗監督を支持する

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松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

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青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。
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<サッカーW杯・ロシア大会 1次リーグH組:ポーランド1-0日本>

これがワールドカップだね

この試合で、日本代表の西野朗監督の采配にネットを中心に賛否が渦巻いている。僕もテレビで見ていてびっくり。「失敗したら、これまでに経験したことがないような、とんでもない批判が起きるぞ」とハラハラしていた。案の定、試合終了後、というより試合の最中からネットでは批判が相当、巻き起こっている。そうした批判を見ていると、何となく憲法9条的だなという自分の土俵の上で考えてしまうのが無名ライターの哀しさ(笑)。結論を先に言えば、僕は結果を含めて西野監督の判断を支持する。以下、説明していこう。

後半、日本がポーランドに1点をリードされ、コロンビアが得点してセネガルをリードした段階で西野監督が採り得る手段は、基本的には2つしかない。

①さらに攻撃的な選手を入れて1点を取りに行く

②自陣でボールを回して0-1の負けを確定させる

この2つの戦略はAとB、2つのリスクが存在する。

A:①を採用し、さらに失点する可能性

B:②を採用し、セネガルが得点する可能性

①と②が成功して得られるゲインは以下。

X:一次リーグ突破(ポーランドに負けず、最後まで攻めたという満足感、達成感)

Y:一次リーグ突破

ABXYの要素を考慮して、②をチョイスしたのは間違いない。その判断は、多分、以下のようなものだったのだろう。

リスク:A > B

ゲイン:X  ≒ Y

②をチョイスして失敗した場合、それはもう、とんでもない批判にさらされるのは覚悟しなければならない。自力突破できる可能性があるのにラスト10分以上自陣でボール回しをして敗退した滑稽なチームとして、大げさでなく世界のサッカー史に残るマヌケな監督・チームとして記憶されるであろう。そう考えると、西野監督は自分の人生を賭けた選択だったのは間違いない。

攻めながら結果的に0-1の負けでいいという、(①+②)/ 2みたいな方法もある。そして、それが最も無難なやり方であろう。しかし、その場合、選手も終了間際になって「本当に攻めた方がいいのか? 守った方がよくないか?」とピッチ上で迷いが生じるのは明らか。チームで意思統一できないまま中途半端に攻め、中途半端に守り2失点で敗退という可能性は考える必要がある。

これはリーグ戦であり、リーグ戦の目的は決勝トーナメントに進むことであって目先の勝利、勝ち点を得ることではない。監督は戦略を明確にして、確実に選手に伝えなければならない。その意味で(①+②)/ 2は、戦略なき凡将の採るべき方法だと思う。

極論すれば、これがワールドカップ。内容より結果が重視される。その結果、国民の間に微妙な空気を生むとか、将来のサッカー人気に影響すると考えて①を採用するのであれば、そういう人は現場の監督よりも政治家になった方がいい。

そもそも西野監督は、決勝トーナメントを見据えて主力6人を外す賭けに出ている。それができるのも日本が2戦で勝ち点4を取り、同組の他のチームに比べ相対的に優位な立場にあるからこそで、そうしたアドバンテージを活用して長い戦いを乗り越えていかなければならない。そういうギリギリの戦い方をしなければ決勝トーナメントでいい成績を収めることなどできないのが、今の日本の立ち位置なのであろう。ワールドカップにおける日本はブラジルではない。だから、結果を含めて僕は西野監督の判断を素晴らしいものだと思う。失敗したら日本に帰れないぐらいの批判があることを覚悟して、その上で実行した勇気は我が身を捨ててチームのために戦う戦士の魂だと思う。

「正々堂々と戦って、その結果、敗退しても満足」という人がいてもいい。それはその人の価値観であるから。ただ、そういう批判をする方は「憲法9条を守ろう」という人のメンタリティーにある種、通ずるものがあるように感じて、僕は違和感を覚える。

護憲派の人は「攻めてきた相手を殺すより、殺される方を選びます」、あるいは「外国が攻めてくるなんて、あり得ませんよ」と可能性を否定する主張をすることが少なくない。こういう主張には「僕は殺されたくないし、相手を殺してでも家族や国を守る。外国が攻めてきた時にどうするかを考えないと、国の存立を危うくする」と反論するしかない。こうした護憲派の主張と今回の西野監督批判は似た構図ではないか。

「ボールを回して勝ち上がるより、敗退する方を選びます」

「セネガルが点を取るなんて、あり得ませんよ」

どう考えるかは、個人の自由ですけどね。

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