今日3日、思わぬところから日刊スポーツの後輩の消息を耳にした。その後輩、仮にXとするが、Xは何というか上昇志向が強い男で、仕事が抜群にできるとは言わないが、とにかく頑張るタイプ。スポーツ新聞向きのガッツを発揮し40歳前後で管理職に。(何とかラインに乗ったのかな)と思っていたら、3、4年で異動と同時に管理職を外されてしまった。日刊スポーツでは管理職を外れるのは珍しくなく、いったん外れてもまた返り咲くこともある。

人生は色々、後輩よ頑張ってくれ

ところがXはその人事がよほど不満だったのか、あるいはちょうど転職しようと考えていた時期なのか分からないが、新部署に入ってすぐに会社を辞めてしまった。再就職先は取引先の1つのIT企業、しかも自分が担当していた会社。そこに取締役として迎えられるというから、彼の異動先の人間は、かなりカリカリしていた。

本音は分からないが、みんな羨ましいと思っていたのではないだろうか。新聞業界は斜陽産業というのは誰もが分かっている。成長が見込まれるIT関連、しかも取締役なら定年まで日刊スポーツにいるより先々楽しみがある。

ただ、僕は(危なっかしいなあ)と思っていた。同僚に「松田、どう思う?」と聞かれた時に、こう答えたのを覚えている。「IT企業から『社員で来てくれ』と言われたら、多分、僕なら行くと思う。でも『取締役で』と言われたら、行かないだろうな」。同僚が不思議そうな顔をするのでこう説明した。「社員なら労働法で身分が保障されるだろ? でも取締役は通常1期2年、それで結果を出せなければ再任されない可能性だってある。そうなったらどうするんだよ。IT企業なんてドライにやってくるんじゃないの?」。

会社法を勉強すれば、取締役の地位の不安定さなんてすぐに理解できる。任期中に結果が出せなければ株主から簡単にクビを切られる。しかも急成長しているIT企業となれば、日本的な義理人情なんて通用しないだろうというのは容易に予想がつく。

そんな話をしたのが4年か5年ぐらい前。僕の不安が的中したと言うべきか、Xは取締役に再任されなかった。話を聞いてその会社のHPを見たら、確かに取締役一覧から彼の名前が消えていた。彼のその後の人生については、嘘か本当か知らないが会った人に「専業主夫をしている」と言っているらしい。ただ、バイタリティー溢れる男だから、これぐらいで潰れるはずがない。この先、また一花咲かせるのではないかと僕は期待している。長い間、同じ釜の飯を食った間柄、ぜひ頑張ってほしいと思う。

会社を辞めてキャリアアップをはかる時代だが、全てがうまく行くわけではない。光あるところ影がある。人生いろいろだな、と感じたGWの1日であった。