小泉純一郎首相が平壌を訪れたのが2002年9月17日、あれからもう15年か。拉致被害者5人が帰国することになり、一つの時代の節目になった。僕にとっても忘れられない思い出である。

小泉さんが訪朝すると発表したのが同年8月30日。9月に入ってからだと思うが、僕は仕事の関係の朝鮮総連の人と新宿で飲むことになっていた。

小泉訪朝から15年・・

その人とはウマが合うというか、ビジネス上いい関係を築いていた。ただ、政治の話は極力避けていた。対立するのは分かりきっているから。しかし、その日は悪いことに訪朝発表後、訪朝前というタイミング。新宿の飲み屋のカウンターでビールを飲みながら、やはりその話になった。

松田:小泉さんが、あなたの国に行きますね。

友人:そうですね。

松田:何か進展はあるんでしょうか。

友人:あると思いますよ。

松田:あると言ってもですよ、拉致問題で知らん顔では何も進みませんからね。

友人:いや、だからありますって。

松田:そうなんですか?

友人:我々朝鮮人は、困難を排して来てくれる勇気ある人を手ぶらで帰らせるようなことはしません。それは朝鮮人にとって恥ずべきことです。

松田:お土産があるってことですか?

友人:そうですね。

松田:拉致被害者が第三国で発見されました、とかでは解決になりませんよ。

友人:まあ、見ていてください。

松田:拉致被害者を返すということですか?

友人:もうすぐ分かりますよ。

この会話から1週間もしないうちに、金正日国防委員長が拉致を認めて謝罪するという日朝首脳会談になるわけだ。衝撃的な事実が次から次へとテレビで報じられる中、僕はその人の言葉を思い出し、何か背筋が寒くなるような思いだった。

世界的スクープを僕だけが知っていたという気分。その人はどこまで知っていたのか、今となっては分からない。北朝鮮問題が緊迫する中、また、その人に会えるといいけどね。