韓国が慰安婦問題での日韓合意についての検証結果を発表した。首脳同士が合意した内容を検証する暇があれば、国民のためにもっとできることがあるだろうと思うのだが(笑)。韓国の行為の無意味さ、愚かしさは今更どうこう言う気もないが、それを報じる日本のメディアでちょっと気にかかる部分があった。

2つのウィーン条約をよく読んでね

産経新聞12月28日付、「韓国 届かぬ容認派の声」という記事(名村隆寛記者)の以下の記述である。

「ソウルの日本大使館前に加え、釜山の日本総領事館前にも慰安婦像が設置された。外国公館前での侮辱行為を禁じたウィーン条約への違反だが・・・」

名村記者、ウィーン条約をちゃんと読んでるのかな。記事を書く前に条約を読めば、このような表現にはならないと思うが。

上記の文章には問題点が3つある。

(1)大使館と領事館では適用される条約が異なるのに、同一のように扱っている。

(2)適用される条約には外国公館への侮辱行為を禁じる規定はない。

(3)韓国側の行為が適用される条約への違反であると断定できない。

以下、順次見ていこう。

(1)大使館に関する規定は「外交関係に関するウィーン条約」で、領事館に関する規定は「領事関係に関するウィーン条約」で、それぞれ定められている。

(2)外国公館等に関する「侮辱行為」に関する規定は以下である。

外交関係に関するウィーン条約22条2項:接受国は・・・公館の安寧の妨害又は公館の威厳の侵害を防止するため適当なすべての措置を執る特別な責務を有する。

領事関係に関するウィーン条約33条3項:接受国は、2の規定(領事機関の不可侵に関する定め)に従うことを条件として・・・領事機関の安寧の妨害又は領事機関の威厳の侵害を防止するため適当なすべての措置を執る特別な責務を有する。

名村記者の言う「侮辱行為」そのものを禁じているのではなく、接受国に、それに類する行為を防止するための義務を定めているのである。つまり「侮辱行為を禁じたウィーン条約」という表現は明確な誤りである。

(3)仮に慰安婦像を設置する行為が名村記者の言う「侮辱行為」だとして、それが両ウィーン条約の「安寧の妨害又は威厳の侵害」に相当するかどうかの判断は容易ではない。それに該当するかどうかを決めるのは、最終的には国際司法裁判所である。

個人的には公館(領事機関)の威厳の侵害の防止を定めた両ウィーン条約の精神に反する行為であるとは思うが、それが直ちに韓国政府に義務を負わせるものであるかどうかは微妙であろう。名村記者が断定するなら、その根拠を示すべきだと思う。あくまでも韓国政府の負った義務は条約の履行としてではなく、日韓両政府の合意に基づく義務である。

記事全体については悪くない内容だと思うが、記事を通すデスクも含めて、プロならこういう細かい部分にも気を遣ってほしいものである。