今日は朝日新聞1月11日付けの社説「徴用工問題 日韓で克服する努力を」を取り上げてみよう。韓国大法院(最高裁)が新日鉄住金に賠償を命じた徴用工問題について、韓国の文在寅大統領が10日の記者会見で「日韓両国が真剣に知恵をしぼらねばならない」と語り、この問題がさらに混迷の度合いを深めていることについて論じている。ちなみに朝日新聞は「韓日」と表記している。音声データはこちらから。

朝日新聞の無能っぷりが分かる貴重な社説

 日本と韓国は1965年の日韓基本関係条約、日韓請求権協定をベースに関係を構築してきた。この点、朝日新聞は「徴用工問題をめぐって韓国政府は盧武鉉政権以来、協定当時の経済協力金に事実上の補償が含まれるとする見解をとってきた。それとは異なる大法院の判断に、どう向き合うのか」と、これまでの経緯を説明する。その上で、日本政府が日韓請求権協定に定められた二国間協議を申し入れて、さらに国際司法裁判所への付託も視野に入れている状況を説明しているが、その点について、こう書いた。

 「日韓の当事国間の対話を離れ、第三国を交えた仲裁委や国際裁判で決着させるのが歴史問題のような懸案(けんあん)になじむのかどうか。どちらかの主張に軍配が上がったとしても感情的なしこりが残りかねない」。

 そして、朝日新聞は「もし仮に仲裁委に向かうとしても、日韓両国はあくまで二国間の話し合いで合意を築くことをあきらめるべきではない。」としつつ、「経済や安保など広く利害が重なる日韓関係の健全な発展のために、両国が心を落ち着かせて考える時である。」と締めているのである。

 端的に感想を申せば「正気か!」という感じであろうか。今更言うのもバカバカしいが、基本的な部分から触れていく。

 まず、朝日新聞がしっかりと読まなければならないのは、日韓請求権協定2条1項。そのまま引用しよう。「両締約国は、両締約国及びその国民(法人を含む。)の財産、権利及び利益並びに両締約国及びその国民の間の請求権に関する問題が、千九百五十一年九月八日にサン・フランシスコ市で署名された日本国との平和条約第四条(a)に規定されたものを含めて、完全かつ最終的に解決されたこととなることを確認する」。

 つまり、両国、両国民に請求権はないとはっきりと確認されている。これこそがこの問題の最も重要な部分で、韓国はこれに明確に抵触する行為、つまり日本企業の財産の差し押さえをしてきた。朝日新聞はこの点、「同時に結ばれた請求権・経済協力協定は、請求権問題の『完全かつ最終的解決』を確認している」と、しているから、これをもってすれば、この問題は「韓国政府が国民に対して責任を負うべき」で終わるだけの問題。

 ところが文在寅大統領は「韓国政府は三権分立により、判決を尊重しなければならない」と語った。国際法では条約と国内法が内容的に矛盾する場合、条約を無効とするために国内法を援用しえないことは広く認められている。条約について規定する国際法に「条約法に関するウィーン条約」、一般に条約法条約と呼ばれる条約があるが、その46条1項柱書きにはこう規定されている。

 「いずれの国も、条約に拘束されることについての同意が条約を締結する権限に関する国内法の規定に違反して表明されたという事実を、当該同意を無効にする根拠として援用することができない」。

 つまり、自国の事情を条約を結ぶ権限はなかったという言い訳は認めないということであるから、仮に韓国の最高裁が「当時の政府が結んだ協定は無効だ」と判断しても、それを韓国政府は主張しえない。言うまでもなく日本も韓国も条約法条約の締約国。

 一度取り決めした条約を国内の裁判所がダメだと言ったから「あれはなかったことにして」と反故にするような政府と交渉しても時間の無駄である。「これからは交渉の場に裁判所の代表も入れろ」と要求され、相手にされなくなる。法律の専門家である文在寅(ムンジェイン)大統領がそれを理解できないわけはない。韓国が判決を大事にするなら解決手段はたった一つ、韓国政府が賠償すること。もともと請求権の完全な解決の規定は、当時の韓国政府が国民への補償は韓国政府が行うからということで決まったと言われているから、当然であろう。

 そうなると日本側としては請求権協定3条に定められた紛争解決手続きに従って手続きを進めるだけである。外交上の経路を通じた解決、仲裁委員による解決、それがだめなら国際司法裁判所への提訴は当然の流れと言えよう。

 ところが朝日新聞はどちらが勝っても感情的なしこりが残るから「両国が心を落ち着かせて考える時である。」と言うのみ。こうした状況において言えることが「落ち着いて考えろ」だけでは何の解決にもならないことは明らかである。あえて言えば考えている間に韓国が既成事実を積み重ねて、請求権協定によって保護されるべき日本の法人の財産が侵害されるという被害が確定してしまう。朝日新聞に国民の財産を守る意識は皆無なのか。国際法や条約を遵守する国際社会の一員としての国家の責任と、国家間の条約を信じて経済活動をする法人の財産を保護するという観念がすっぽりと抜け落ちている。つまりこの社説を読む限り、朝日新聞は国民の財産、権利を軽視あるいは無視する新聞ということである。

 朝日新聞が言っていることは、街の商店のレジに勝手に手を突っ込み、持ち去ろうとしている強盗と、その商店の店主の双方に「落ち着いて考えろ」と言ってるのと同じようなもの。何の解決にもならないというより、強盗の味方をしているのと同じである。

 子供でもおかしいと分かることが、なぜ分からないのか。普通は、何らかの政治的意図があるか、そうでなければ、よほどのバカと考えるしかない。無知無能の極みという言葉が当てはまるような今日の朝日新聞の社説である。