今日1月15日は朝日新聞の社説「大雪の季節 立ち往生の再発を防ぐ」を取り上げよう。音声データはこちらから。

 昨年2月、大雪のため福井県内の国道8号線で1500台の車が立ち往生し、約46キロにわたって全く動かなくなったのは記憶に新しい。幹線道路はその地域の大動脈と言ってもいいから、それが麻痺すると国民生活に多大な影響を与える。そうならないように行政は対策を万全に備えなければならない。これに対して朝日新聞は以下のように主張している。

雪国の皆さん、頑張ってください。

①主要幹線道路を管理する国が、積雪状況を迅速に把握し、通行を早めに規制のうえ周知するなどの措置を講じなければならない。

②国や自治体が連絡を密に取りあい、行動計画を共有し、除雪作業など相互支援のネットワークを機能させることが大切。

③スタッドレスタイヤで十分という考えはとらないのが賢明であろう。

④雪の日には、車の利用を極力避けることが肝要。

⑤物流関係の企業は道路事情のこまめな確認、迂回ルートの選択、出発時刻の変更など、対策を重ね、柔軟に業務にあたってほしい。

 いつもは抽象論を振り回す朝日新聞の社説も、この日は実に具体的。朝日新聞もいいことを言うじゃないか、松田隆は何でそれに文句をつけるんだ、と思う方も多いのではないだろうか。

 僕もこの朝日新聞の主張に不満はない。実は今回、福井新聞に昨年の豪雪の件を問い合わせたところ「昨年のような大雪と、国道がストップすることで生活そのものが甚大な被害を受けます」とのことであった。東京に住む僕には頭では分かっても、正直なところ、なかなか実感できない。

 ただ、忘れてはいけないのは、この主要幹線道路の麻痺については朝日新聞も直接の利害関係者であること。僕も新聞社にいたから分かるが、東京近郊では東京の印刷工場で新聞が刷り上げられると、トラックで高速道路を使って輸送される。日本海側が大雪の時は締め切り時間が3、4時間繰り上げられ、早めに出発して雪による遅れをカバーすることになっている。それが昨年2月の福井県のような大雪で国道が立ち往生となると新聞が販売店に届かない、すなわち読者に届けられないという事態に陥ることは十分考えられる。国道の麻痺は新聞社の機能の麻痺と言っても差し支えない。

 主張そのものが悪いとは言わない。先ほどの福井新聞も「詳しくは見ていませんが、新聞社だけの都合で、そう書いたわけではないと思いますよ。実際、大雪で生活そのものが大きな影響を受けていますから」と言っていた。

 ただ、言論機関としての見解を示すという非常に高い公共性を帯びた社説の中で、自社の利益に直結することを、それを明らかにせずに主張しているという姿勢には疑問を感じるということである。もし、それを主張するなら正直に「新聞を運ぶトラックも影響を受けて、新聞社にとっても死活問題である。そして新聞に情報を頼る国民の生活をも脅かす」と書くべき。つまり自分たちも利害関係者であることを明示して、その主張が行われていることを示すのが中立、公正の立場を標榜する新聞社としては当然であろうと僕は思う。

 それを考えてもう一度、朝日新聞の主張を読み直してみよう。「幹線道路が麻痺しないように行政はしっかりと対応しろ」「一般人は大雪の時に車を使うな」「物流関係の企業は迂回ルートを確保しろ」。これらはすべて「新聞を運ぶトラックがスムーズに運行できるようにしろ」という主張を含んでいると言えるでしょう。

 この社説は新聞社としての自分たちの利益を守る目的を持ちながら、それは何ら明らかにせず、大所高所からものを言っている。公共性の仮面に隠れた私企業としての利益の追求の目的。朝日新聞のもう1つの顔を見た気がするが、いかがだろうか。